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 終わりの見えない暗闇の中から蠢くひも状の何かが垂れ下がっている。子供達は何も知らずそれに手を伸ばす。いや、とジャックは思った。彼らはきっとそれが何だか知っているんだ。 ひもを見上げる子供達の横顔はあまりにも理知的で、何もかも心得ているように見えた。目には何らかの意志がうかがい知れたし、口元には柔らかい微笑まで浮かんでいた。 やがて一本のひもが、ある子供の手のひらに触れた。次の瞬間それは子供の手にぷっくりとした黒い穴を開け、皮膚の中を這いずり回り腕を進んでいく。 少年の顔は痛みに歪みながらも、彼はそれを必死に受け入れようとしていた。ジャックは何かを叫んだが、自分ではさっぱりわからなかった。  目を覚ましたジャックは途端に悪臭を大きく吸い込んでしまい、もう少しで胃の中身を吐き出すところだった。 そんな勿体無いことが許されるような暮らしではない。口元に手を当て、弾む呼吸を小さくゆっくりと落ち着けていく。 体中に汗をかいていた。そして体中が痒かった。金色の髪を苛立たしそうにかきむしり、その辺に落ちているぼろきれの我慢できそうな部分を探して顔を拭う。 真っ黒な両手を見て、そろそろ水浴びがしたいなと思った。
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