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「チキロ!起きろ!」  ジャックはゴミ溜めのどこかへ向けて叫んだ。右後方で空き缶が大量に転がり落ちた。 振り返ると陰気臭い二つのライトがジャックの方へ向けられ、その光に彼の頭は一瞬また夢の中へ飛んだ。しかしそれは本当に一瞬のことだったので、何も思い出すことはできなかった。 「我は眠ることを知らない」 「うるせえ行くぞ」 「ジャックの向かう先は我々が昨日いた方角だが」  ジャックは舌打ちして反対方向へ歩き始めた。薄暗い人工灯の下、どこもかしこも時代遅れの廃品と悪臭を放つ生ゴミだらけのこんな場所で正確な方角などロボット以外にわかるわけがないのだ。 チキロは錆びついた関節をアクチュエータで無理やり動かしながら、ゴミの山を器用に飛び降りてジャックの隣にたどり着いた。 ジャックの青い瞳が人型ロボットの鉛色のボディを睨む。 「相変わらずうるせえ野郎だ」 「我に性別設定は無い。野郎という決めつけはやめてもらおう。そもそも我はロボットであり」 「そういうところがうるせえ野郎だってんだよ。あとどれぐらいでサウスバーンの壁までたどり着くんだ?」 「計算上では残り三日と二十二時間三十二分」 「あと四日か」 「このペースで休まず歩き続けた場合」 「アホか俺はロボットじゃねえんだよ」 「我はロボットである」  まるでそれが神とか皇帝とか教皇とかと同じような単語ででもあるように誇らしげなチキロを見てジャックは口を歪めて肩をすくめるしかなかった。 ロボットと言い争っても空しいばかりだということはここ数日でよく学んでいたのだった。
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