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第3章・もう一人の美少女
「今日はいないんだな」
泰造が講義堂を見回しながら、飲み過ぎと寝不足のガラガラ声で言う。結局、昨日の飲み会は朝五時まで続いた。
「ああ」
八雲も、寝不足と少し二日酔いの重い頭で、辺りを見回すが、昨日いた少女の姿はやはり無かった。
「私も見たかったわ」
その華奢な体とは裏腹に酒に強い静香は相変わらず落ち着いた調子で呟くように言う。
講義が終わったばかりのまだ人が多く残り、ざわついた講義堂に昨日の五人が集まっていた。
「やっぱ、お前の気のせいなんじゃないのか」
泰造が八雲を見る。
「そんなはずはないんだけどなぁ。ここんとこ気付くと毎日いたんだ」
八雲が広い講義堂を改めて見舞わす。
「こっちが気取ったのを見透かしたのかもしれないね」
ハカセが言う。
「そうよ。私が昨日近寄ったからだわ」
茜が言った。
「うん、多分そうだ。やっぱり何かあるんだ」
八雲が真剣な表情で一人呟いた。
その時だった。
「お、おいっ」
泰造が急に八雲をつついた。
「なんだよ」
「あれ、あれ、見ろ」
「ん?」
泰造が指さした方を八雲が見ると、講義堂の上の入り口から、一人の少女が入って来るところだった。
「あっ」
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