第3章・もう一人の美少女

4/4
前へ
/175ページ
次へ
「なんか八雲君を見てない?」 「そんなばかな」  と言った泰造だったが、美少女は確かに八雲を見ていた。 「いや、お前を見てるぞ」  泰造が驚いて八雲を見た。  確かに、八雲たちから数メートルの位置まで来ていた美少女は、その薄いどこまでも透明な青い瞳で、八雲を射貫くように見つめていた。 「なっ、なっ」  美少女に見惚れて我を失っていた八雲は、少女のその神秘的な眼差しと美しさが、その時初めて自分に向けられていることに気づき、たじろいだ。しかも、少女の瞳はしっかりと八雲に固定されたまま動かなかった。 「なっ、なっ」  八雲は、その少女の眼差しに縛り付けられるかのように、身動き一つできずその場に立ち尽くした。 「あっ」  その時、見つめ続ける少女の瞳が、突然八雲の目の前に迫って来た。 「ああ」  そして、八雲の心の奥深くの何かを貫いた。 「ううっ」  その瞬間、八雲はへなへなとその場に、気を失うように倒れた。 「おいっ」  すぐ隣りにいた泰造が異変に気付き叫んだ時には、八雲はもう床に完全に倒れ込んでいた。 「八雲!」 「八雲君」  声の大きい泰造と、甲高い茜の声が講義堂に響き渡った。
/175ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加