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「なんか八雲君を見てない?」
「そんなばかな」
と言った泰造だったが、美少女は確かに八雲を見ていた。
「いや、お前を見てるぞ」
泰造が驚いて八雲を見た。
確かに、八雲たちから数メートルの位置まで来ていた美少女は、その薄いどこまでも透明な青い瞳で、八雲を射貫くように見つめていた。
「なっ、なっ」
美少女に見惚れて我を失っていた八雲は、少女のその神秘的な眼差しと美しさが、その時初めて自分に向けられていることに気づき、たじろいだ。しかも、少女の瞳はしっかりと八雲に固定されたまま動かなかった。
「なっ、なっ」
八雲は、その少女の眼差しに縛り付けられるかのように、身動き一つできずその場に立ち尽くした。
「あっ」
その時、見つめ続ける少女の瞳が、突然八雲の目の前に迫って来た。
「ああ」
そして、八雲の心の奥深くの何かを貫いた。
「ううっ」
その瞬間、八雲はへなへなとその場に、気を失うように倒れた。
「おいっ」
すぐ隣りにいた泰造が異変に気付き叫んだ時には、八雲はもう床に完全に倒れ込んでいた。
「八雲!」
「八雲君」
声の大きい泰造と、甲高い茜の声が講義堂に響き渡った。
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