0人が本棚に入れています
本棚に追加
茜が力を込めて言った。
「そうそう。ずっとな」
泰造が興奮気味に言う。
「知り合いじゃないんだよね」
ハカセが訊いた。
「全然。見たこともないよ」
「知らなかったお前はモテるんだな」
泰造が真顔で八雲を見る。
「絶対、違うと思う」
茜が力強く断言した。
「おいっ、俺も自分でそう思うけど、お前が言うな」
八雲は、少し怒り口調で言った。もちろん、茜は全く動じる風もなく、無邪気に笑っている。
「でも、あの八雲君を見る視線は普通じゃなかったよね」
ハカセが呟いた。
「うん、ほんとほんと。ずっと見てたもん」
静香が同調した。
「気絶までしちまうしな」
泰造が八雲を見る。
「・・・」
八雲は、あの迫ってくる美少女の視線を思い出していた。あの時、八雲は何か心の深い、記憶の深い部分に、何か得体のしれない何かを感じた気がした。それがなんなのか、あまりにも微かで、漠然とし過ぎていて言葉にすることすらも出来なかったが、それは何かものすごく自分にとって大事なことのような気がしていた。
「何かが起こってる。俺の知らないところで」
八雲は一人呟いた。
「何かが」
八雲は言い知れぬ何か不気味な恐怖を一人感じていた。そんな八雲を茜が横から心配そうに見つめる。
最初のコメントを投稿しよう!