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五人が正門の前まで来た時だった。
「あっ、しまった」
八雲が叫んだ。
「どうしたんだよ」
泰造が八雲を見た。
「忘れ物」
「まったく、ドジだなぁ」
「先行っててくれ。直ぐ追いつく」
八雲は一人、慌てて校舎の方に戻って行った。
人気の無い廊下を八雲は走った。
「くっそぉ~、めんどくせぇなぁ」
八雲は走りながら一人愚痴った。
「確かあそこに忘れているはずなんけどなぁ」
その時だった。何か異様な気配を感じ、八雲は顔を上げた。すると、廊下の向こうに、人が一人立っているのが見えた。
「あっ」
それは、あの姫巫女純だった。
「なっ」
しかも、何かただならぬ空気を感じる。八雲は走るのをやめ、その場に立ち止まった。
「なっ、なっ、」
純の周りには、何か光のオーラのようなものが、気化したドライアイスのように漂っている。それは気のせいではなく確かに見えた。
「な、なっ、なんだ。どうなってんだ」
八雲が戸惑う中、純はゆっくりと八雲の方に近づいて来た。純は、その透き通る青い目で、八雲を射貫くように見つめていた。
「あなたは発生してしまった」
その声はどこまでも澄んで、全ての空間に響くようでもあり、八雲の心の中に直接響いてくるようでもあった。
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