0人が本棚に入れています
本棚に追加
「こいつを追いかけてなんのメリットがあるかってことだよな」
泰造もそれには続いた。
「私も見てみたいな。その子」
静香が言った。
「めっちゃかわいかったよな。そういえば。なんかちょっとうらやましい気もするな」
泰造がビールを飲みながら首を捻る。
「知り合いじゃないのよね」
静香が八雲に尋ねた。
「全然」
「お前が忘れてるだけなんじゃないのか。ほらお前、バイトすぐやめて転々としてた時期あっただろ」
泰三が片手に持っている缶ビールを突き出すように言う。
「う~ん」
八雲は腕を組み首を傾げるが、思い当たる節はない。
「その時に何か恨みでも買ったんだろ」
「なんで恨みなんだよ」
「恨みがあるなら姿はなるべく見せないんじゃないかな」
ハカセが冷静に分析する。
「そうね。なぜ同じ距離感でいるかってことよ。多分そこが重要なんだわ。その女の子にとって」
静香も冷静に分析する。
「それにあんなかわいい子だったら、絶対忘れないだろ」
八雲が言う。
「そうだな」
それには泰造もすぐに納得した。
「できたぜぇ~」
その時、隣の台所から茜が大きな土鍋を持って、リビングに入って来た。
「おっ、待ってました」
泰造が歓喜の声を上げる。
最初のコメントを投稿しよう!