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第1章・謎の美少女
あれから八雲の心配をよそに、平和な日々が流れた。
純の周囲は、いつもどこにいくにも我も我もという男たちで溢れかえっていた。それはまるで一つの純を頂点とした何かの生き物の群れようであった。
八雲はあれから幸か不幸か、純に見つめられるどころか、目すらも合うことがなかった。
「そういえば、あのつきまとっていた美少女はどうなった」
講義の終わった泰造が、いつものように八雲に近づいてきた。
「あれから全く姿を見せない」
純の取り巻きが作る人垣をチラリと眺めながら、八雲は言った。
「よかったじゃないか」
「う~ん」
「いなきゃいないで気がかりか」
「そんなんじゃねぇけど」
「なんだよ」
「なんだか、姫巫女純が現れたのと関係しているような気がするんだ」
「おいおい、また、お前の妄想か」
「そんな気がするんだ。なぜかはっきりと」
「お前絶対ノイローゼだって。少し、休め」
泰造は八雲の背中を叩いた。
「う~ん」
八雲には根拠は無いが、なぜか二人は関係があるような確信があった。
「やあ」
ハカセだった。
「よう、ハカセも講義終わったのか」
「うん」
ハカセは頷いた。
「おうっ」
茜だった。その後ろには静香もいる。
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