第一話 竹割り老人

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「いえいえ、川向こうの権六どんに頼んで、薪を貰ってきてくれたら……」 「じゃあワシは山の竹藪に行ってくるよ」 「ちょっと、おじいさんったら」 制止の声もむなしく、おじいさんは山の方へと向かいました。 「うーん。この辺りは臭うのう。ヤマ師たる己の血が騒ぐわい」 うっそうと繁る竹藪の中をおじいさんが徘徊し続けます。 時折りすれ違う村の若い衆が「どうした爺さん、迷子かい?」と気にかけてくれますが、返事もろくに返さずに辺りを探し回るのです。 あれは違う、これも違うと、さ迷うこと半日。 やがて、陽の光も届かない奥地へとたどり着きました。 慣れた山といえど、辺りの様子は不気味なものでした。 風の無い中で竹が揺れ、おじいさんは身を小さくしました。 やれイノシシだ、腹を空かしたクマだと、その都度に怯えるのです。 それでも引き返しはしません。 勇気を振り絞って一歩、また一歩と進み、そしてたどり着きました。 目の前に、それはそれは不思議な光景が広がるのです。 まるでお天道様が地に降りたかのごとく、大変まばゆく光る竹があるではありませんか。 ーーしかも2つ。 「これじゃこれじゃ! この節(ふし)の中にはとんでもないお宝が眠っておるぞぉ!」 半狂乱で鉈をふるい、その竹を不用意に切り刻みました。     
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