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「いえいえ、川向こうの権六どんに頼んで、薪を貰ってきてくれたら……」
「じゃあワシは山の竹藪に行ってくるよ」
「ちょっと、おじいさんったら」
制止の声もむなしく、おじいさんは山の方へと向かいました。
「うーん。この辺りは臭うのう。ヤマ師たる己の血が騒ぐわい」
うっそうと繁る竹藪の中をおじいさんが徘徊し続けます。
時折りすれ違う村の若い衆が「どうした爺さん、迷子かい?」と気にかけてくれますが、返事もろくに返さずに辺りを探し回るのです。
あれは違う、これも違うと、さ迷うこと半日。
やがて、陽の光も届かない奥地へとたどり着きました。
慣れた山といえど、辺りの様子は不気味なものでした。
風の無い中で竹が揺れ、おじいさんは身を小さくしました。
やれイノシシだ、腹を空かしたクマだと、その都度に怯えるのです。
それでも引き返しはしません。
勇気を振り絞って一歩、また一歩と進み、そしてたどり着きました。
目の前に、それはそれは不思議な光景が広がるのです。
まるでお天道様が地に降りたかのごとく、大変まばゆく光る竹があるではありませんか。
ーーしかも2つ。
「これじゃこれじゃ! この節(ふし)の中にはとんでもないお宝が眠っておるぞぉ!」
半狂乱で鉈をふるい、その竹を不用意に切り刻みました。
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