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「ふぅん。じゃあこれは放してくるの。村の広場に行ってくるの」
「これ、山の方においてきなさい!」
女性の美を全て揃えたような娘ですが、彼女の心は豪胆そのもの。
猿のような見のこなしに、力はクマよりも遥かに強く、そして粗暴でした。
ところ構わずに鼻をほじり、人目も憚らずに放屁など当たり前です。
おじいさんやおばあさんが何度も叱りますが、一向に改めようとはしません。
これにはどうも辟易としてしまうのでした。
ではもう一人のヤヒメはというと、こちらは大変な才女でした。
詩(うた)を詠めば人だけでなく蝶や鳥までもが集まり、琴を鳴らせば荒野に花が咲き乱れ、筆を取らせれば流麗に言葉を書き連ねていきます。
それらの腕前は都にも知れ渡り、正体の知れない才女がどこかに居ると噂で持ちきりとなっているのでした。
ですが、こちらは容姿に恵まれませんでした。
肌には年中デキモノがあり、鼻はつぶれたように低く、目も常に閉じているかのように小さい。
そして美の象徴と言える髪も不思議と肩の辺りから伸びなくなり、性質もパサついていて指通りが悪いものです。
幸いにも当の本人は自分の美醜を気にしてはいません。
それでもおじいさん達は違います。
親心がついつい娘達の将来を案じてしまうのです。
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