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「カグは美しいが、粗暴で男を立てる事を知らん。ヤヒメは頭も良く、才能に溢れているが、容姿が良くない。これでは嫁の貰い手に期待はできん」
「おじいさん。それも良いではありませんか。元気なだけでアタシは満足ですよ」
「そうは言うがのう、独り身のままで居るのも寂しいもんじゃ。それにワシぁ欲が出てきてしもうた。子を持てば孫の姿を見とうなるわい」
「ううん。その気持ちはわかりますがねぇ……。どうしたものでしょう」
「このままでは、どちらも難しいのう……」
まだ十に届くかどうかの年頃ですが、育ちの早さを思えば、この心配事も遠い話ではありません。
おじいさんとおばあさんは、その事に頭を痛めていました。
一方カグとヤヒメは、そんな思いなどつゆ知らず、伸び伸びと成長していきました。
数日後。
都から村にお役人様がやって参りました。
何でも近くに街道を通すらしく、その話を村長とするために来たのです。
人夫の数に報酬、それから工事を始める日にちなど、細々としたやり取りがありました。
話が終わるとお役人様は都に戻ったりはせず、村の外れまで足を運びました。
昔からの友人であるおじいさんに挨拶をしに来たのです。
「これはこれはお役人様。このようなむさ苦しい所へ」
「おう、変わりなく元気そうじゃな。近くに用があったので、顔を見に参ったぞ」
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