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「何もお構いはできませんが、宜しければ中へ」
「急に邪魔をしてすまんな。上がらせていただこうか」
気さくな笑顔を浮かべて、お役人様が家の奥へと入りました。
それから囲炉裏の前に腰を降ろし、差し出された白湯をチビリ、チビリと大事そうに飲むのです。
おじいさんも態度こそ改まっていますが、とても嬉しそうです。
長年親しくしている人に会えたからでした。
お役人様は土産話に都やお国の事を教えてくれました。
やれ最近は政変が激しいだの、やれ外国が攻めてきそうだの、とても壮大なものです。
それを聞いてもおじいさんにはお伽話のようですが、とても感じ入ったように聞いていました。
そして2杯目の白湯が飲み干された頃、お役人様が居住まいを正しました。
おじいさんは「そろそろお帰りになるのだろう」と思いましたが、それは違いました。
「ときに、この村には大層美しい少女が居ると聞いた。たしか名を……かぐや姫と申したかのう」
「ええ、それでしたらワシの娘にございます」
「なんと!? そなたの娘御であったか! 頼む、一目だけで良いから会わせてはもらえぬか?」
「もちろんでございます。ご挨拶が遅れて申し訳有りません。ばあさんや、2人はどこに居るかのう?」
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