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「カグなら裏庭ですが、ヤヒメは詩を詠みに隣村まで出てしまいましたよ」
「これは間の悪い……ではカグだけで良いから連れてきてくれ」
そうしておばあさんに連れられたカグですが、それは酷い格好でした。
髪も顔も泥だらけで、服も着崩れています。
おじいさんは心の中で「少しくらいは整えてこぬか」と、怒りました。
「お役人様、見苦しいものをお見せしました。ただちに着替えてこさせますゆえ……」
「これは、何と……何と美しい娘か!」
お役人様は上等な服が汚れるのも構わず、四つん這いでカグに近寄りました。
その目をクワと見開いて、目の前の光景を瞳に焼き付けようとしていました。
「おっちゃん、だれなの?」
「ワシか。ワシはそなたの父様の友じゃ。さぁ、名を。そなたの名を教えておくれ」
「アタシはねぇ、カグっていうの」
「これカグや! さっきから失礼ではないか!」
「まぁまぁ、良い良い。礼など霞むほどの美貌であろうに。ところで、何か見せてはくれぬか? 詩でも琴でも好きな方で」
「うたぁ? ことぉ?」
「あ、あのお役人様。それが堪能なのはもう1人の子でして……」
「何じゃ、興が乗らんのか? そなたの得意なもので良いのじゃぞ」
「んーー? トクイなのぉ?」
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