0人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ
「ふふっ。さん付けなんていつぶりかしら。シダユリって呼ばれてるわ、よろしくね」
そう言って微笑んだ彼女は着替えをベッドの上に置くと、「バンザーイ」と促した。
補佐ってこんなことまでしなきゃいけないのか、と心の中で同情すると、
「今、『司令官補佐ってこんなことまでしなきゃいけないのか』って思ったでしょ」
「エスパー!?」
「顔に出てたよ?そうね、私は司令官補佐だけど子供たちのお世話係も兼ねてるのよ。やれせてくださいってお願いしてね」
そう微笑んだ彼女は、器用にパジャマを畳んだ。
「私、子供が好きなのよ」
「へぇ。......あ、下は自分でやる!」
ズボンを下ろそうとしたシダユリを慌てて止めて、「そう?じゃあ部屋出てるわね」と去った彼女を見送った。
▽
ガヤガヤと混む食堂。
沢山の職員達が朝食をとっている。
皆オレに優しく声をかけてくれて、Aセットがオススメとまで教えてくれた。
白米・味噌汁・焼き魚・漬物という超和食のAセットを食堂のおばちゃんから受け取り、シダユリと一緒に空いている席を探す。
すると、見慣れた顔を見つけた。
「......なんで母さんここで朝ごはん食べてるの?」
同じAセットを食べる母さんが、昨日の少年──刀道スズリ──の向かいに座っていた。
「だって、結局私もここに泊まってたから『どうぞお母さん食べていってください』って言われたんだもん」
「もん て」
母さんはこの信じられないような出来事の連続に、オレより順応している気がする。
「隣、いい?」
オレはスズリに問うた。
英語が所狭しと書かれた参考書の様なものを読んでいた彼は「ああ、いいよ」と小さく笑う。
「ユウキ。スズリ君すごいわよ!あの咲南小学校に通ってるんだって。知らない?んー、あんたには十年無理な私立小学校よ」
と軽く嫌味を混ぜて言ってきた母さん。
「いえ、そんなことないと思いますよ桜さん。俺なんか全然です」
いつからウチの母親を下の名前で呼ぶ仲になったのだ。いや、母さんのことだから「桜って呼んでよ」みたいな事言っていそうだ。
「えー、でもユウキ英語読めないわよ?この前なんか『game』を『ガメ』って読んでたんだから」
「いいんだよ日本語読めれば!生きていけるもん!」
「もん て」
最初のコメントを投稿しよう!