2話

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「ふふっ。さん付けなんていつぶりかしら。シダユリって呼ばれてるわ、よろしくね」 そう言って微笑んだ彼女は着替えをベッドの上に置くと、「バンザーイ」と促した。 補佐ってこんなことまでしなきゃいけないのか、と心の中で同情すると、 「今、『司令官補佐ってこんなことまでしなきゃいけないのか』って思ったでしょ」 「エスパー!?」 「顔に出てたよ?そうね、私は司令官補佐だけど子供たちのお世話係も兼ねてるのよ。やれせてくださいってお願いしてね」 そう微笑んだ彼女は、器用にパジャマを畳んだ。 「私、子供が好きなのよ」 「へぇ。......あ、下は自分でやる!」 ズボンを下ろそうとしたシダユリを慌てて止めて、「そう?じゃあ部屋出てるわね」と去った彼女を見送った。 ▽ ガヤガヤと混む食堂。 沢山の職員達が朝食をとっている。 皆オレに優しく声をかけてくれて、Aセットがオススメとまで教えてくれた。 白米・味噌汁・焼き魚・漬物という超和食のAセットを食堂のおばちゃんから受け取り、シダユリと一緒に空いている席を探す。 すると、見慣れた顔を見つけた。 「......なんで母さんここで朝ごはん食べてるの?」 同じAセットを食べる母さんが、昨日の少年──刀道スズリ──の向かいに座っていた。 「だって、結局私もここに泊まってたから『どうぞお母さん食べていってください』って言われたんだもん」 「もん て」 母さんはこの信じられないような出来事の連続に、オレより順応している気がする。 「隣、いい?」 オレはスズリに問うた。 英語が所狭しと書かれた参考書の様なものを読んでいた彼は「ああ、いいよ」と小さく笑う。 「ユウキ。スズリ君すごいわよ!あの咲南小学校に通ってるんだって。知らない?んー、あんたには十年無理な私立小学校よ」 と軽く嫌味を混ぜて言ってきた母さん。 「いえ、そんなことないと思いますよ桜さん。俺なんか全然です」 いつからウチの母親を下の名前で呼ぶ仲になったのだ。いや、母さんのことだから「桜って呼んでよ」みたいな事言っていそうだ。 「えー、でもユウキ英語読めないわよ?この前なんか『game』を『ガメ』って読んでたんだから」 「いいんだよ日本語読めれば!生きていけるもん!」 「もん て」
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