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こんな感じに笑いながら盛り上がる二人を、スズリは少し、寂しそうな目で見ていた。
「あ、英語といえば」
オレは、夜中のことを思い出す。
「志田さ......シダユリ。ここに、髪も肌も真っ白い女の子、いる?」
その言葉に、シダユリとスズリは驚いた顔をした。
「どうして知ってるの?」
「え、いや。昨日、いやもう今日か。夜中にトイレ行ったら廊下で見つけたんだよ」
そう言うと、二人は「ああ」と納得し、彼女について話してくれた。
「その子はナタリア。ステラ・ナタリア・イストリア。ここ、言語癌対策本部の二人目のキャスターよ」
「え、一人じゃなかったんだ」
「ええ。半年前までは二人で戦っていたんだけど、半年前、ある事故があってね......」
口を止めたシダユリの代わりに、今度はスズリが口を開く。
「君が言語世界に入ってきた世界の穴。あれは半年ほど前から日本各地で発見されている。ゲートはキャスターしか通れないが、穴は誰でも通れる。もちろんキャンサーもだ。だから感知次第すぐに防ぐ必要がある。いくらゲートを守っていても、穴から出られたらどうしようもないからな」
「......なるほど」
昨日オレが教えた穴は、夜中には塞ぎ終わったらしい。発生原因不明のそれは、あんな化け物をいきなり街中に解き放つ恐れがあるということか。
「ナタリアの両親は、ここの職員だった。ナタリアがキャスターの能力に目覚めたのも、彼女達が四年前に日本に来た後だ」
そこでスズリは水を一口飲み、続ける。
「半年前、埼玉に出現した世界の穴。ナタリア両親はそれを塞ぎに向かい、作業中にキャンサーと遭遇した」
「え」
「普通、作業にはキャスターが一人付く。けどその時俺とナタリアは、ゲート侵攻してきたレベル3と戦闘中だったんだ」
ギュッと、拳を握り俯いたスズリ。「俺のせいだ」そう呟いたのが聞こえた。
「いいえ。スズリくんのせいじゃないわ。......結局、キャンサーがこちらの世界に出てくる前に穴は閉じられたわ。ナタリアの両親を言語世界に残してね」
「そうか、じゃあ......」
「ええ。ナタリアは半年前、両親を亡くしているのよ」
すっかり暗い雰囲気になったテーブル。周囲の喧騒に対比され、沈黙が重い。
空気を明るくしようと、務めて話題を出した。
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