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そう答えたスズリはスーツケースを受け取り、表面を撫でる。
「前のはすみません。俺がもっと......」
「いや、誰かを守って壊れたなら、あいつも本望だろうさ」
おそらく昨日壊れた装備のことだろう。部屋の奥を良く見ると、配線むき出しの傷ついたそれが置いてあった。
「それにマーク8は新たな改良もしておる。新たなギミックも付けておるから試してみるといい」
そう言うとメカニックは、今度はこちらを向いた。
「さて小僧。名前は、焔音ユウキと言ったな?」
なにやら書類を見ながらのその問いに、「うん」と答える。
「突然だがユウキよ。昨日受けてもらった検査の結果、貴様はキャスターではない」
「「はい?」」
その驚きの声は、スズリからも同時に出た。
「ん?もう一回言うぞ?ユウキはキャスターではない」
「い、いやメカニック。それは無いと思います。俺は目の前でこいつがキャンサーを倒すのを見ました。その時本部でもキャスター反応をキャッチしています」
そう反論したスズリに、メカニックは腕を組む。
「そうじゃの。確かに此奴は言霊の力を使い、能力を発動した。じゃが」
書類をこちらに見せると、一枚の画像を指差した。
俺の胸部のレントゲン写真か。一箇所赤く丸されている。
「此奴が持っている言霊保管機関、ワシらは〈霊蔵庫〉と呼んでいるが、そこに一切言霊が保管されていない」
驚いた顔のスズリと対象に、オレは早くもついていけなくなっていた。
キョロキョロと二人の顔を見るオレに、スズリは説明を始めた。
「つまり『キャスターは霊蔵庫から言霊を取り出し戦う』のに対し、君は『霊蔵庫に言霊が無いのに戦えている』ということだ」
「なるほど」
「うむ。ユウキよ、貴様が能力を発動した時、何が鍵となった?」
「死んじゃったオレの父さんが残してくれた言葉を叫んだこと、だと思う」
「やはりそうか。恐らくだが、貴様が使っている言霊は〈遺言霊〉と呼ばれるものだ」
「〈遺言霊〉?」
「人の言葉には言霊が宿るとは聞いたな?遺言霊とは、大量の言霊が宿った言葉を聞いた者の胸に、その言葉を覚えている限り溢れる、言霊と同じ力を持ったものじゃ」
「『あの日の言葉が力をくれる』というのは、遺言霊が起こしたことだと言われているんだ」
スズリが補足し、オレはなんとなく理解をした。
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