2 あの絵の少年

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噂話、特に男女の関係に関するものは広まるスピードが恐ろしく早いもので、しかもその片方がもともと注目の的だったのだから絵麻と彩人が探しあっていた、という話は脚色されて瞬時に学校全体に広まった。ついでに放課後2人が美術室で絵を描く約束をした事も。 めんどくさい、ちょーめんどくさい。何でこんなことになった。確かに探してたし一緒に絵を描く約束もして実際いま2人一緒に美術室にいるけども。 ここまで大勢の野次馬に囲まれるとこっちだってやりづらい。そりゃ今までも人前で自分の力を披露することはあった。けどテレビの取材ぐらいでそれも何回もあったわけじゃない、せいぜい三回だよ。訳の分からん話も聞こえてくるし。 「あの2人って小学校の絵のコンクールがキッカケで文通してたらしいよ。それでその相手に高校で偶然再会って…少女マンガかっ!尊いっ!」 尊い?いや全く尊くないから。文通もしてないから。全然少女マンガじゃないから! 「四葉っていいとこの坊ちゃんらしいぜ。それで三筆に取り入ったって。いやー、金持ちのやるこたあこわいなー。」 いやいや私は決して取り入られてないし買収もされてない。それにあんた四葉君の絵みたらそんなこと言えなくなるかんね。絶対後悔するから。 美術室の前の廊下と一階ゆえ教室の窓の外に集まってきた大勢の野次馬が2人の事をジロジロみている。というよりは絵麻の力を見にきたものと、絵麻に気に入られた謎の平凡少年を見にきたものの2種類に大まかには分類できる。 これじゃあ描けないって。私が集中出来ないし何より。 「なんか、私のせいで浴びなくていい注目あびせちゃったね。ほんとごめん。」 何より四葉君に対して悪すぎるでしょ。教室で暴露したの間違いだったかな。でも呼び出してわざわざいう話でもないしそっちの方が怪しいよな。どっちにしろ野次馬の餌食になるのは本来私1人で十分だったわけで。あー何で私はこんな感じなくてもいい罪悪感に苛まれてんだ!いやでもほんとごめん四葉君! しかし彩人は教室では縮こまっていたのに今は意外にも平気なようで、絵麻の謝罪に疑問を呈してきた。底抜けに明るい口調で。 「何で三筆さんが謝るんだよ!俺は感謝こそすれ恨んだりとかゼッッッタイあり得ないから!本当に嬉しいんだ。一緒に絵が描けるなんて。」
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