休息

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「大地、お前、絶対にあいつに抱かれたりするなよ」  友人の剣呑な眼差しに、大地は困った顔をした。そして、平平が指す相手のことを思い出す。確かに彼は、女なら一度は抱かれたいくらいの色男だったが、抱かれたいと思ったことは一度もなかった。苦笑いを浮かべて、首を傾げる。 「どういうことだよ、平平」 「まんまの意味だよ、ど阿呆」  その目は釣り上がり、完全に大地のことを非難しにかかっている。抱かれるつもりなどないのに、酷い言われようだと返す。 「やることなすこと無茶苦茶だからだよ! 名前は呼ばない、無理やりピアス開けるわ刺青入れるわ。命知らずか!」  友人に拳銃を渡してくる奴に言われたくない、と大地は思ったがそれは口にせずにいた。平平の怒りは至極真っ当ではあったが、それが大地に通用するかというとそういうことではなかった。 「あいつは、絶対に俺に手を出さない」  馬鹿野郎、と叱責が飛び、大地は耳を押さえた。 「分かって! ない! 第一、人じゃない奴らに一生そんな思い出なんか背負わせるな、分かってるのか」  そう憤る平平の声は徐々に小さくなった。全く大地が意に介していないような顔をしていたせいだ。言っても意味がない、むしろそういったことを全て理解している上で悪びれる様子がない大地を、平平は責められなかった。そして、その眉根を寄せて小さな溜息を吐いた。 「出会わせるんじゃなかった」  どこか吐き捨てるようなその口調は、怒りというより嫌悪に似ていた。 「俺は出会えてよかったと思ってる」  笑って答えれば、平平は再び、更に深い溜息を吐いて言い切った。 「俺は、お前の恋は絶対に応援しない」
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