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「……ふざけるなっ」
出会ったときと同じような、手負いの獣の瞳でテオドールは唸る。焦りと怯え。それがどこから来るのか、抱かれることが現実感を帯びてきたからなのか、それはわからない。けれど、無抵抗だったその手が、大地の胸にあてられ、押しのけようと力がこもる。それでも突き飛ばすことをしなかったことを彼は後悔するべきだと、大地は彼の顎を捉え、唇を重ねた。
乱暴にならないように、しかし情熱的に舌を口内に忍ばせる。応えようとしない舌を舌先でなぞり、口蓋から歯列に至るまで、どこも知らないところがない程に蹂躙し尽くす。息継ぎの暇すら与えぬ程、喰らい尽くす。
テオドールははじめこそ頭を振って逃げようとしたが、がっちりと抑えた手がそれを許さず、口内を荒らされる。そのうち観念し暴れるのをやめたが、その舌は頑なに縮こまり、奥で固くなっている。それを誘い出すかのようにゆっくりと絡め、舐めていく。力が抜けていった舌を軽く吸い、歯を立ててやる。おずおずと、テオドールの舌が大地の舌に絡んだ。足りない酸素を求めるように、彼は大地のキスに応えた。実際、そうだったのかもしれない。飲み込みきれない唾液が顎を伝って垂れる。空いた手で髪を、首筋を撫でる度に鼻に抜けるような吐息が漏れる。気の済むまで、大地は彼の唇を味わった。
「……そんな可愛い抵抗じゃ、男は止まれないって知ってるだろう?」
唇を離せば、つ、と一本線が伝った。真っ青だった顔はほんのりと赤みが差し、息は僅かに荒くなっていた。必死で酸素を求めて喘ぐ姿に、煽られる劣情。苦しそうな流し目は抗議の色を宿していたが、見なかったような顔をして、大地はその首筋に顔を埋めた。
首筋に舌を這わせ、同時に彼の胸を撫でる。芯を持ち始めた乳首の周りをゆっくりと撫でる。ゆっくりと乳首に指先を近づけていくと、テオドールはくすぐったそうに身をよじった。
「……男の胸をいじって何が楽しい」
「男は胸が好きな生き物だろう。俺もその例に漏れない」
寒さからか、それとも反射的なものなのか、立ち上がった乳首を口に含む。ぬるりと優しく舐めると、その感触が気持ち悪いのか、テオドールは快楽とはまた別の声を漏らした。しばらく諦めずにそうしていたが、お互いの熱が冷めていくだけになりそうだったので、大地は最後、とばかりにその慎ましやかな乳首にカリと歯を立てた。
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