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「……どうかしたのか」
「いいや……目にごみが入っただけだ」
その一筋を拭い、現実を思い知る。大地の時だけが、少しずつ、でも確実に過ぎていく。それを、まざまざと見せつけられた。これから、テオドールは何度大地が死ぬことに怯えるだろう。重ねていく時間の中で、何度壊れてしまいたいと望むのだろう。そしてその中で、ただ壊されることだけを希望に生きるのだろうか。今抱えている気持ちを永遠に変えて、大地を愛するのだろうか。大地と共に朽ちていくことが、最上の幸せだとでも言うのだろうか。それは、全てを許容したようでいて、拒絶以外の何物でもなかった。
大地は、自分の失恋を理解した。それは当たり前に、そして無慈悲に突きつけられた。完膚なきまでに、完璧に、その恋は終わるしかなかった。強く美しく笑う顔は、誰よりも大地が欲していたものであったはずなのに、それは残酷な、終わりの始まり。絡んだ糸を切ることもできず、嘆く二人の男の話。
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