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 喘ぎ声が部屋の中に響く。必死に押し殺そうとシーツを噛み締めていた口は、とうに開かれ声を漏らしている。大学になって一人暮らしを始めたが、親のことを気にせず抱けるのが楽だなぁと思う。壁の薄いアパートだから、隣人に声は抜けているだろうが、まぁ隣人の声も筒抜けであるから、お互い様だろう。 「テオドール、そんなに気持ちいいか?」  容赦なく前立腺を擦り上げながら聞いてやると、声にならない悲鳴が上がる。抱え上げた脚が引き攣り、空を蹴った。それを手で押さえて口付けると、それだけで肌を粟立たせるところが愛しい。前戯に1時間以上かけて、どろどろに溶かした体を苛めば、どこもかしこも性感帯のように声を上げる。いつもは出すまいと必死で堪えている声が、もはや抑えられていない。それどころか、自分の声にすら煽られている姿に、血が滾る。 「まぁすっかり、淫乱になっちゃって」 「違、っふ……だ、め……ぁっ」、  腰を止め、抜けるか抜けないかのギリギリまで引き抜いてやる。無意識に、テオドールの脚が絡みつく。ふっと笑って、テオドールを揶揄する。 「俺は動いていないけど、自分から飲み込んでいく。腰、動いてるぞ」  息を飲む音。体に力が入る。いくら彼が理性で制御しようとしても、蠢く粘膜はどうしようもない。きゅんきゅんと大地を締め付けるそこは、早く早くと蠕動する。 「っぅ……ん、も、……無、理……っ」  荒い息を吐いて、だらしくなく舌を出して喘ぐ顔を隠す姿が、愛おしい。普段は無愛想で冷めた顔をしているこんないい男が、自分の下ではその顔を唾液で濡らし快楽に溺れる。そろそろ開放してやろうかと思った瞬間、ベッドサイドの電話がバイブ音を立てる。本当ならば放っておきたいところだったが、目をやれば、その光は赤かった。唯一、その色に変えている相手は、どんな時であろうとも大地が取るのを遅れると怒る。舌打ちでもしたい気分になりながら電話を取る。大地の下でひっと悲鳴が上がる。
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