ブルー・ディ・ブルー

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ブルー・ディ・ブルー

哀しいくらいに愛していた。あの子がいれば何もいらないと、心底そう思って生きていた。十年、十年だ。あの子に出会うまでに十五年、あの子に出会ってから十年。あの子を失くした残りの人生はいったい何年続くのだろう。改札を抜ける背中に声をかけたかった。声をかけて、名前を呼んで、振り返って欲しかった。好きだと言いたかった。愛していると言いたかった。あの子のそばに少しでも長くいたくて、押し込めてきた言葉を最後に声にしたかった。いまさら、何を後悔するというのだろう。怖がって、諦めて、ずっと嘘を吐いてきたくせに。あの子は私を愛さない。あの子が向けてくるのは友情だけだ。優しくて、冷たいあの子。この手を伸ばしたところで叶う恋などきっとありはしなかった。それでも、たった一言、爪痕にすらならないとしても、本当の気持ちを伝えたかった。 夜が明ける。あぁ、なんて白々しい空だろう。まるで私のようだ。 「結婚おめでとう。幸せになってね」
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