森に棲む人

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 僕は唇を震わせ答えなかった。重い沈黙が訪う。結露が窓を伝う。外はまだ霧が漂う。  またあの子たちの羽ばたきが聞こえる。僕たちしか聞いていない羽ばたき。どこへ飛んでもちゃんと戻ってくるようにできた生き物だ。あの子たちには、落葉のあかとはまた違う鮮烈なあかが流れている。それは彼の為にある。 「……仲間が増えないことは一番最初に説明したはず」 「……それは諦めてる」 「私はアユムと友のままでいたいから、君の望みには応えられない」  今日はもう帰ってまた今度来て、と言われてしまった。従うしかない。  玄関で僕は告げる。 「……来週には帰国するんだ」 「……そうだったのか」 「ねえ」空元気で声を出す。「クリスマスパーティーしない? 一足早くさ」  彼の意表を突かれた表情は面白かった。長く生きた彼すらきょとんとするようなことを僕は言ったのか。 「クリスマスパーティー? 私も君も別に宗旨を持っては……ああ、君の国では関係無しにお祭りみたいにやるんだったね」 「そういうこと。どう?」 「了解。叶えてあげられる望みなら、私は応えるよ」  準備の手間のことも含め話しあった末、帰国前夜にクリスマスパーティーをすると決まった。  玄関を出る時、背後で彼は言った。「薪を割らなきゃいけないね」  僕は頬を綻ばせて駆け出す。森の中でひとりで歓喜の声をあげた。
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