スノープラネット

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そんなスノウとの時間のなかでも、特別好きだったのは、夜、僕が布団に潜り、眠りにつくまでの数分間だ。スノウは毎晩、僕に、お伽話を聞かせてくれた。──魔法がかかった雪だるまと、ひとりぼっちだった女の子のお話。雪だるまと女の子は友達になり、一緒に冒険の旅に出かけるのだ。 『──雪だるまは、そのひとりぼっちの女の子のことが、ずっと気になっていました。雪だるまも、ずっとひとりぼっちだったから。さみしい気持ちが、よく分かるのです。』 『──だから、雪だるまは、その子のさみしい気持ちを食べてしまいたいと願いました。すると、雪だるまに魔法がかかって、動けるように、しゃべれるようになったのです。雪だるまは、たいへん喜びました。』 『──ふたりは、氷の国に着きました。ひどい寒さに、女の子がふるえたので、雪だるまは、魔法で、冷たい雪をふわふわの羊毛に変え、女の子のためにコートを仕立てました。』 『……そして……ふ……たり……は……』 やがてスノウの優しい声は、僕の夢の中へと溶けていく。 僕は、この物語を最後まで聞いたことがなかった。いつも、途中で眠ってしまうから。 ──今も僕は、この物語の結末を知らないままだ。 ……僕には、後悔していることがたくさんある。後悔したって仕方がないのは分かっている。それでも、後悔せずにはいられないのだ。 例えば、いつものように、スノウと散策していた時のことだ。向こう側から、小型のラジオを片手に、しかめっ面をしながら、叔父さんが歩いてきた。     
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