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「叔父さん、どうしたんですか。」
「ああ、トーヤか。見てくれよ、これ。今朝から、ずっとこうなんだ。」
僕は、叔父さんの手元へと目を落とす。
『……あッア"ァ……あァ……あア"ァアアア……』
ラジオは、人間の呻き声のような不気味な音を発していた。
「──幽霊憑き? 」
「ああ、もうこうなったら、どうしたって駄目だな。今から、屑山に捨てて来る。」
「僕の父さんにまた、新しいのを頼んでは? 」
「そうするよ。」
そう言って、叔父さんはスタスタと歩き去る。
『……ア"ァァ……』
呻き声が、背後からまだ微かに聞こえた。
──こんなことは、此処では特別珍しくもなかった。「幽霊」と呼ばれるものたちの仕業だ。幽霊は、この惑星の至るところに存在するらしいが、姿形はなく、それ単体では、僕らが認識することはできない。けれども、一度機械に取り憑けば、異常な音を発させたり、暴走させたりと、様々な不調を引き起こすのだ。
──僕の母さんは、幽霊憑きになって暴走した除砂車に轢かれ、死んだらしい。父さんがそう言った。
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