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父さんは、「……あれに与えたのは、家事遂行のための能力と、必要最低限の教育プログラムだけだ。そんなことは、できるはずが……。」と、何やら一人ブツブツと呟いた。そして、スノウのことを「幽霊憑き」だと言った。
「幽霊憑きだ! 畜生、油断した!離れの方にまで、幽霊避けを張っておくんだった。」
「──そんな、違うよ! スノウはどこもおかしくなんかない! 幽霊憑きなんかじゃ、ない! 」
父さんは、乱暴にスノウの腕を掴んだ。「やめてよ!」と言い切る間も無く、スノウは壁に叩きつけられる。
その時、スノウは、僕に向かって微笑んだ。そして、ゆっくりと体勢を整えると、父さんを真っ直ぐに睨みつける。
──スノウは、高らかにこう言い放ったのだ。
『──ええ、私は幽霊憑きです。間違い御座いません。』
──そして、スノウは、僕から取り上げられた。粉砕機にかけられ、粉々にされて、機械の墓場──屑山の何処かに棄てられた。
それから僕は、屑山に、よく登るようになった。スノウの腕が、指が、琥珀色の目玉が、この場所の何処かに転がっているのではないか。そう強く信じては、スコップでガラクタの山を掘った。
父さんが死んだのは、スノウが棄てられてから、およそ二年後のことだ。
その翌日の晩、叔父さんが、酒をたくさん飲んだことを覚えている。
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