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隠された『好き』 ―漫画家とストーカー ー (BL・R15)
「……以上です。この主人公への共感が弱いので、もう少し分かりやすいように修正していただいて。雨音先生、聞いてますか?」
橋倉絵美にいぶかしげに問われて、雪乃雨音はハッと我に返った。
「あ、すみません。ぼーっとしてました」
「まったくもう」
長い髪を後ろで結び、おしゃれな黄色いスカーフをカチューシャにしている橋倉は、幾何学模様がデザインされたプラスチックタイプの眼鏡の奥で、切れ長の目をすっと細めた。イラついた気配を感じ取り、雨音は小言へ身構える。
「私は他にも担当を抱えていて、忙しいんですよ? 打ち合わせの時間はしゃきっとしてください。とりあえず、細かいところはこちらに書いておきましたので、また分からなければ電話なりメールなりしてください」
「ごめんなさい……」
雨音は書類を受け取りながら、橋倉に謝った。
雨音はデビューから二年目の漫画家だ。ネット漫画の投稿サイトで上位に食い込み、念願の出版デビューを果たした。デビュー当時から支えてくれている、虹丘出版の橋倉には頭が上がらない。
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