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時に厳しいことも言うけれど、橋倉は雨音を褒めてくれて、落ち込みそうになると励ましてくれる。雨音は自己主張が下手で、しょっちゅうくよくよしているから、ありがたいビジネスパートナーだ。
「ですが、やっぱり私は先生の書かれるお話は好きですよ。好感が持てるキャラクターだし、動物や魔物が可愛らしくて」
「そうですか。ありがとうございます!」
単純なもので、雨音はパッと明るい気持ちになった。
作品やキャラは、雨音にとって、実際に会うことはかなわないけれど、遠くに住んでいる大事な友達みたいなものだ。空想の世界に行けば、彼らはふわっと現われて何かしゃべっている。そのシーンをメモして、欠片をつなぎあわせれば、いつか線になって物語として浮かび上がるのだ。
今、雨音が書いているのは、異世界転移した女性が、魔物や動物を仲間にして、国を改革していく物語だ。雨音ゆきというペンネームで、男でありながら少女漫画寄りの画風で書いている。中性的な名前を使うことで、読者に与える印象をぼかしていた。
本当は少年漫画を目指していたのだが、そちらは全然人気が出ず、なんの気なしに書いてみた話が人気になったので、世の中っていうのは不思議だ。だが、原作付きの漫画家が多い中、好きなものを描くチャンスに恵まれていることは素直にありがたい。
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