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「マサノリくん、これあげるー!」
小1のバレンタイン、
同級生の女子何人もから
チョコレートをもらった。
その中には無邪気に笑うアイツも居て
俺はただただ嬉しかったんだ。
幼稚園年長で再びこの地に戻ってきた。
その日から、オドオドと怯えた目で俺を見る
アイツが気になって仕方がなかった。
背は俺より高いのに、
何故か俺にはいつも怯えてて。
何だ、コイツって思っていた。
自分が年中の時にした酷い事も忘れて。
ブランコの順番待ちをしている時、
俺の前がアイツだった。
漕いでるんだか漕いでないんだか
ユラユラ揺れているだけに見えて俺は思わず
「リノーー!押してやる!」
横に立って背中を押してやった。
アイツは全力で断ってきたけど、
そんなの知るかよ!
気付いたら身体が動いていたんだ。
俺が園に戻ったのは卒園間近。
ブランコを押してやった日から
少しずつアイツは怯えなくなった。
卒園式後の謝恩会。
皆隣にはママが座っている。
ウチは、ばぁちゃん…。
今日も俺のママはこの場所には居ない。
同じテーブルのリノの隣にはパパ。
パパか…。
俺には何でパパが居ないんだろうな。
何となくつまんねーなって思って隣を見ると
リノも同じような顔をしてた。
「リノのママ、ピアノ上手だね!
リノも習ってるの?」
ボソボソとピアノは嫌いって返事が返ってきた。
どうやらばぁちゃんに無理矢理
やらされてるらしい。
ふーん…。
ピアノが弾けるママなんかカッコイイじゃん。
何でコイツはそんなに嫌そうなんだ?
謝恩会が終わって園庭で皆が写真を撮っていた。
ばぁちゃんはカメラなんか
持ってくるような人じゃなく
そろそろ帰ろうかと門に向かう。
その時、ヨシヤのママが2人並んで!と
カメラを構えて写真を撮ってくれた。
終わると今度はナオキんち。
そんな事を繰り返していると…。
「リノ!マサノリくんと撮ってあげる!」
リノのママのデカい声がした。
リノに並べ並べと、そりゃもう強引に…(笑)
引き攣ったような笑いを浮かべたリノが隣に来て
リノのパパが構えるカメラに顔を向けた。
多分、アレが2人の初めての2ショット。
貰ったあの写真は今も大切にアルバムの中にある。
気になって仕方なかったアイツが
俺にとってかけがえのない人になるなんて…。
俺はあの時思いもしなかったんだ。
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