家出決行

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家出決行

 夏休みのとある夕方、僕は家出を決行する準備をしていた。  家族は両親と兄の四人家族。父親が医師、母親が看護士として働いており、兄はどこかの大手IT企業で活躍していると聞いている。生活は一般的な家庭よりは裕福で、同級生と比較するに不自由なく生活してこれた方なのだと思う。  勉強も得意な方で、成績は上から常に三番以内をキープ。県内で一番と言われている進学高の受験も労せずかわせると踏んでいる。  今のところ順風満帆な人生、何の苦労をしなくても与えてもらえる環境、家族は僕の将来を勝手に決め込んで、その通りに動いている僕を安堵した目でいつも見ている。何の想定外も障壁もないかのように。  それが僕には実につまらなかった。  いわゆる反抗期と呼ばれるものか。僕は聡一郎という一人の人間であり、両親の作品でもなんでもない。僕にも意思があるのだということを、両親や兄に知らしめたかった。  だから僕は家出を決意した。  家出先は二年前に隠れ家、なんて言って数度だけ遊んだ地元の山にある小屋にした。 久し振りに小屋の中を確認した時、中は昔遊んでいた当時のままで、人の出入りが限りなくゼロに近いと思ったからだ。  物置から父親の寝袋やランタンなど、サバイバル系アイテムを調達する。 着替え、生活必需品を集め、万が一の寒さ対策に薄いブランケットも一枚、大きめなボストンバッグに押し込んでいく。一定期間の食料と水は小屋の近くのコンビニで調達する為に、財布にはちょっと多いが三万円を入れた。  家を出る際には書き置きを残した。 『家出します。三日後には戻ります。聡一郎』  これを家出と呼んで良いのかは分からないが、期日を記した。そうでもしないと両親のことだ、警察にでも何でも言って全力で捜索されても困る。ああやって期日を書いておけば、世間体を気にして簡単には警察へも届けにくいだろうし、近所にもバレずに通そうと思えば通せるはずだ。  こうして午後の四時を迎えた時点で、僕は家出を決行した。
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