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「うわあ!すごーい!」
丘に着いたとたん,ミオンが叫ぶ。
目の前には,雲ひとつない青空と,この町をなぞっている海が広がっている。
遠くに向かうほど濃い青色になっている。
風が気持ちいい。
「こんなとこあるなんて知らなかった…」
「あぁ,そうだろー。昔,よく来てたんだ」
ヤマザキ先生が芝生に寝転んで両手を組んで頭の下にして,空を見上げる。
両横に,ボクとミオンがそれぞれ体育座りで座る。
「ヤマザキ先生のオーラとおんなじくらい,キレイな青だねぇ!」
先生のオーラは,すごく澄んだ青らしい。
優しいヤマザキ先生にはピッタリだ。
「そうだねえ!」
ボクも調子を合わせる。
「今はもういいぞ。見えるフリしなくて」
「えっ」
二人の声がほぼ重なる。
まさか,と思うと同時に,やっぱりな,とも少し思った。
ボクがオーラを見えないことを先生が知っているのは薄々感づいていた。
でもやっぱり,ミオンもオーラが見えないのか。
ミオンがオーラを見えていないようには感じなかったけど,昨日の事件で,なんとなくそう思ったのだ。
「疲れるよなあ。ずっと見えるふりをするのは」
「……」
ミオンもボクも,黙っている。
小さなアリが草の上を登っている。
「ごめんな。何もできなくて」
海を見つめる。太陽の光が乱反射してキラキラと白く光っている。
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