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心の中のざわめきが次第に体に伝わるのはほんの一瞬とも、じんわりとひたひたと迫ってくるようでもあって、立ち止まって自分の手のひらを眺めればやはり、僅かに震えているのが見える。
同じように足元から這い上がる微かな震えも。
心の動揺が体に直接現れるのを見て、頭は逆に落ち着きを取り戻していた。
捨てたものの大きさと、その代償に手に入れたもの。
取捨選択を絶えず行う事が人生ならば、私の人生は正しかったのか…
雨が降り始める時のアスファルトの匂いも、うるさく鳴き続ける虫の声も、もう2度とあの場所に帰れなかったとしても、忘れる事は出来ないのだろう。
いつか未来の自分が激しく後悔する日が来たとしても、それでも何度この瞬間に戻れたとしても、この手をとるだろう。
全てを捨てても、私はこの夢から醒めたくなかったのだから。
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