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時折ハンバーグを切る手が止まる大神くんを視界に入れないようにした俺は三人との雑談を楽しむことに専念することに。
そんな俺の思惑も知らずに薫が大神くんに尋ねた時はほんとに殴ってやろうかと思った。
あと遥さん。
貴方が大神くんの状態を作った犯人なんですけど自覚ないのですかそうかよ無自覚かよ無自覚受けかよ萌えたわ。
「午後からって生徒会が決めた競技があるんだよな。
うわー…憂鬱」
「そっか。遥も参加だもんね、頑張ってね」
「おう!ありがとな」
「煉も、応援してるね」
『がんばるう〜』
「わっ煉きゅんあざとい!!」
そう、午後からの競技は俺が大活躍の予定だ。
もちろん王道展開を期待した遥さんも。遥、俺はきみを一番に応援してるからね。
最近、遥ってばサボり気味だしね。
たくさんの萌えを調達してもらわなければ、割に合わない。俺ここのところフラグしか建ててない気がするもの。
萌えの枯渇は俺の生命の危機なんです。
……すみません、少し言い過ぎました。
「プログラムでは生徒会特別競技の前にリレーと二人三脚があるみたいだね」
「お〜。あ、そういえば煉は二人三脚に出るんだったよな?」
『うんっ!一応練習は沢山してきたから1位を目指したいなあ〜っ』
「応援してる!」
『えへへ、ありがとお〜っ!』
爽やかくんの言葉にいち早く反応を返した遥にお礼を言うと長く伸ばされた前髪の下にある端正な顔が真っ赤に染まったのを視界で捉えた。
なるほど、俺の悩殺スマイル(笑)が原因ですか理解。
それにしても…そうか、二つ目の競技に二人三脚が入るのか。俺はペアの子との初対面の会話をふと脳裏に浮かべる。
『よろしくねえっ!モブk…えっとお…』
『あっ俺の事は模部でいいよ!』
『わかったあ!』
色々とお互いの理解がズレているのも分かっていたが、俺は有難くペアの子を"モブくん"と呼ばせてもらうことに。
それからの練習はかなりキツいものだった。
モブくんは外見の割に熱血タイプだったようで、「咲楽!負けるな!自分に打ち勝て!」ととても暑苦しい言葉をもらいながら練習に励む羽目になった。
そんないつか焼き尽かされそうな日々も今日で終わり。
こうなったら1位を獲るしかない。そんな心意気。
そのためにも今はお腹を満たして体力補給だ。
………しかしどうしようかもうお腹いっぱいだ。残したら爽やかくんのハリセンが飛ぶ予感しかしないというのに。
止まりそうになる手をなんとか動かし、注文した料理のひとつであるパスタを少量、フォークに巻き付けて口に放り込む。
美味しいのに満腹すぎて気持ち悪い。
ここまでお腹が満たされていれば、デザートも食べられないだろうと見越しさり気なく、それらが盛り付けられた小皿を薫の方へ。
よし、薫気付いていない。
「え、ええっと、あのさ」
「おーい、チワワ坊や!食事中にすまない、今ちょっといいか?」
遥の隣に座る爽やかくんがなにか切り出そうとしたのを遮った声の主が突如、視界に入ってきた。
漆黒の髪に漆黒の瞳、そして眼鏡が特徴の我ら委員長さまの田中 権左衛門くんだ。
相変わらず名前の癖が強い彼である。
お金に目がないことが有名な彼は俺たちの席まで近付いてくると、俺に顔を向ける。
「チワワ坊や。急ですまないけど二人三脚のペアが早退してしまい、ペアが変わった」
『あっ、そうなんだあ?ちなみに誰なのお?』
「…………小柄だった」
そっか、そういえばきみ人の名前を覚えない主義だったね。非常に迷惑なやつである、覚えてくれ切実に。
「顔は覚えているが」
『どんな顔してたのお?』
「目と鼻と口があった。眉毛は薄めだ」
ほんっっっとーに迷惑なやつである。
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