青春という名の戦争がはじまる Ⅰ

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『か、会長さまあ…?』 「あ?どうしたレン」 困惑からか震える声を発する俺を会長は怪訝そうに眉間にしわを寄せて見つめてくる。 作戦会議から俺と会長との距離はかなり縮まったと思う。団長と副団長という関係上、ふたりで集まることも多くなった。 ふたりで話をするうちに会長は俺のことを"レン"と呼ぶようになった。 "貴様"よりかは良い気がするが、それはそれで少々複雑になる。 言葉は違えても本人に「レンはいやだ」と講義をしてもさすが俺様会長、「だからなんだ」で返されてしまい、断じて俺の口から了承はしていないがしてしまう形となった。解せぬ。 『あの…、』 「煉?どうかした?」 「なんだ、さっさと言え」 なら、 遥と会長の距離はどうなってしまったのだろう。 「もう"遥"と呼ばないのですかあ?」そう尋ねたいのに口を開けては唇が震えて、上手く声が出ない。 まるで声の出し方を忘れたみたいに発声できず、俺はその歯痒さに耐えるように唇を噛んだ。 そしてある疑問が湧く。 果たして俺がそれを尋ねていいのだろうか。 そもそも尋ねなくとも理解できるし、傍観者と決め込んだ俺がそれに踏み入れるのも癪だ。 会長がそう呼んだということはそういうことだろう。 濁らして言わせてもらうが察してもらいたい。 会長は遥をそういう目で見るのをやめた、見るフリをするのをやめた、そのどちらかだろう。 この様子から察するに後者の可能性が大なのだが。 《第一種目は100M走です。選手の生徒は招集場所にお集まりください》 「あっ、やべ。俺だ。帝と煉、じゃあな!」 「ああ」 『行ってらっしゃあーい!』 そして、俺がそれを察していることを会長は知っているはずだ。 そう仕向けたのは会長なのだから。 放送委員の生徒の放送により、呼ばれた生徒たちが素早く行動に入る。 遥も俺らに手を振ると颯爽とその場を去った。 それを見送った俺は隣に堂々と座る男に視線を向ける。 『で、会長さまはずっとココにいるつもりなんですかあ?』 投げかけた質問にわずかに不機嫌そうな表情を浮かべる会長。無視か、おい。 そもそも生徒会が堂々と応援席に座る、なんてことこの異常な男子校にはあってはならないのだ。 一見、いつもの教室と差程変わらないと思われるかもしれないがなんせ今日は体育祭だ。 いつものように終わるはずがない。 普段は身近にお目にかかることがない生徒会の長に位置するこの人と関わりたくないはずがないのだ。 証拠に会長と話をしている俺に嫉妬の視線が刺さる。 ちっ。これだからイケメンは。滅べよ( ゚д゚ ) 『生徒会席に行った方がいいと思いますよお?』 遠回しに「出ていけ」と言っているつもりなのだが、果たして俺様何様バ会長に通じたのか。 ……通じたとしてもこの人はスルーという名の拒否をしそうだが。いやする。うわー、厄介でしかないわ。 この体育祭で仲良くなりたい(性的な意味で)と思っている生徒からすれば嬉しいこと間違いないのだが、万が一でも襲われたらどうするのか。 俺的にはメシウマなんだけど愛のない行為は萌えない。 本来、会長はここにいるべきではないのだ。 その姿を見せれば黄色い歓声を受ける生徒会。 普段の学校生活でも危なそうなのに今日はなんて言ったって体育祭。生徒も浮かれに浮かれまくっているこの状況下で平然と一般生徒と共に競技を見るとかどんだけ勇気あるんだこの人。 会長さまの代わりに俺が特別に設置された生徒会用のテントに行ってもいいなら全然行きますけど。 あ、あそこには会計のチャラ男がいるんだっけ。 …………っうわ、やめとこやめとこ。 高校生になってはじめての体育祭でハジメテ(笑)を失いたくありません。 「そんなことよりあの変態も走るらしいぞ。」 『』 先輩も走ってきたらどうですか。生徒会席まで。
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