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一向に去る様子を見せない会長さまに重い溜め息を吐いて、彼が指す方向を見た。
そこには遥と雑談をする、我が従兄弟殿がいた。
あ、そっか。
「変態」って薫を指す公用語なんだっけ。
そんな我が従兄殿は隊長と同じ、月光組らしくその頭髪には黄色のヘアアイテムを数個着飾っていた。
腐男子×腐男子っていいかも。
腐男子である彼を見ただけでそんなことを思い浮かべる俺は間違いなく末期だと思います。
危ない危ない。
本日は待ちに待った体育祭。
暑苦しい男もいるわけだが、この学園には「え、あれは女でしょ?」と思いたくなるほどの可愛い顔をした男子も見受けられるわけでありまして…。
率直に言うと、妄想不可避なわけです。
せっかくの青春を俺の腐脳で満たしたくない。
少なからず俺はそう思っている。
だから、今日はいつもより何億倍も気を張らねばならないのだ。
……まずは深呼吸。この際、隣にいる会長のことは一切無視をしよう。今会長を視界に入れたら俺様×ヘタレ腐男子を妄想してしまいそう。てか確実にする。自分が怖い。
《選手の入場です!この晴れやかな空の下で勝利の笑みを浮かべる勇者は一体、どの組なのでしょうか!》
「「「「うおおおおおおおお!!!!」」」」
「「「「きゃああああああ!!!!」」」」
もちろん入場してくる生徒が全員イケメンということではない。
いつもなら黄色い歓声があってもイケメンたちの名前を口にしながらその歓声を発するのだが、今日は違う。
皆がみんなこの体育祭という行事に胸を躍らせているために起こったのだ。
黄色い歓声にビクビクしながら放送委員の暑い司会で入場する生徒の中にいる薫と遥の姿を見て思わず息を呑む。
『……』
……双方が腐男子だったら片方はバイかゲイでその片方はノンケかな(※個人の妄想です)
──────( ゚д゚)ハッ!!!!!
「おい、どうした。」
これはまじで末期かもしんない、と頭を抱え込む。
自分でもここまでとは1ミリも思っていなかった。
男同士で身体が際どく接近する場合に鼻血が溢れてしまいそうになるのは言わずもがな腐男子の性だ。
ここは頷けるし、納得もできるはず。
だけど俺は会話だけで妄想が捗っていた。
……それはこの学園に来てからだったため、学園に溢れる同棲愛に対する肯定を肌にヒシヒシと感じていたからと思っていた。
『…………』
思っていたのだが──以前行った見廻りと言い、ふたりが会話をする場面を見たことのないのにも関わらずそのふたりで妄想することが多くなった。
この学園に染まっていれば俺も今頃 イチャイチャできる彼氏がいるはずだ。
彼氏などいないし、今後つくる予定もない。
つまり、俺は別にこの学園に染まったわけでもない。
遭遇する度に身体をベタベタ触ってくる会計に応えたことなど一度もないし。
染まったとすれば───隊長、だろうか。
いや、間違いないと思う。腐男子といえば薫もいるわけだが薫とは最近 腐の会話はしていな……してるわ。めちゃめちゃしてるわ。あれ()
え、じゃあ俺 薫に染まったの?ん??
「おい、だからどうした。」
『…………』
染まったって言い方…あ、なんかあったな。そういうの。「俺色に染めてやるよ」的なやつ。
会長さまとかそういうセリフ似合いそう。
好きな人じゃなかったらめためたイタイやつ。
そして死ぬほど引く。
そんな折、視界に薫の前の人が位置に着いたことで薫が前に詰めているところを入れながらふと疑問が頭に浮かんだ。
さて、薫は一体誰の色に染まるのだろうか。
…ノンケが同性に惚れる瞬間ってめっっちゃ好き。
─────( ゚д゚)ハッ!?!?!?!?!?!?…(´・_・`)
「会話しろ、レン。」
『……会長さまあ』
「っ、…あ?」
先程からずっと無視をしていたせいか返事をすることで一瞬だけ会長さまが嬉しそうに口を緩めた。
…会長さま、いいんですかそれで。
『もう開き直ることにしましたあ!末期最高お!』
「おい、何の話だ。」
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