青春という名の戦争がはじまる Ⅰ

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せっかくの青春を無駄にはしたくないのだが、それと同じくらいに妄想しないとつらたんと思ってしまう自分がいる。 先程、会長にも言った通り末期最高だ大歓迎だ。 俺が末期だとすれば隊長は俺よりも重症なため、おそらく隊長はすでに腐の女神になってると思う。 腐の女神さまはきっと俺よりも辛い心境だと思うよ。 隊長からの情報によると、あっくんとは組が離れたらしい。 あっくん今頃ぴえんだね。ぴえんでは済まないほど落ち込んでるんだろうけど。 一方、隊長はあっくんと一緒の組でなければ妄想を口にすることができなくなるためそれはそれは悲壮感が漂っていました。 あっくんはそんな隊長を見て「お前もオレがいなくて寂しかったのか…!」と顔に浮かべていたがそれも数秒の出来事で、すぐに落ち込んでいた。その顔は隊長の顔を見る前より明らかに暗かった。 親友だからこそ、隊長の落ち込んでいる理由が分かってしまったのだろう。 あっくんがんばれ。 隊長も一応がんばれ。 《さあ!さっそく飛ばしているのは我が校の生徒会長様が君臨する晦組です! それに続いてゴールを告げたのは…なんと月光組! 月光組には生徒会長様の奥さm…ペアの副会長様がいます!……これはこれは早くも生徒会のツートップの対決となるのでしょうか!》 「…ふっ、俺様の組だからな。」 『……。あ、薫だあ』 放送委員の生徒の司会を聞いて自信満々に色気溢れる笑みを零す会長さまに冷たい視線を送ると、第二走者である薫に視線を送る。 寮長である要さんから聞いた話によると、毎年体育祭では風紀委員長と生徒会長という学園のツートップが君臨する組が最終的に対決することになるという。 つまり、俺も巻き込まれるんですねぴえん。 帰ってもいいかな。 だが、今のところ対決する羽目になりそうなのは副会長さまが君臨(笑)する月光組。 実際のところ第1種目の時点でどうこうなるとは思わないので様子見といったところだ。 そして今後上がってくるだろう風紀委員長さまがいる組は確か月代組だ。 黒組vs白組とか、これって先生たちが仕組んだとかじゃないよね?? ヤラセの匂いがぷんぷんするのですが。 《では、位置について。よーい…》 マイクに声を通しながらピストルを持った左腕を掲げる体育教師の剛田(ご う だ) 朱莉(あ か り)先生。 某大人気な青いタヌキ(仮)主演のアニメのガキ大将の苗字とヒロインにありそうな、なんとも可愛い名前をもつ先生だがもちろん男性教師だ。 それも、漆黒の髪と瞳をもつ、筋肉もしっかりついており随分がっしりした体格の強面イケメン。 体育教師兼生徒指導を受け持つ教師ということで生徒には恐れられる先生のはずなのだが、 通称が「あかりちゃん」といったとても可愛いモノのために恐れられながらも尊敬の眼差しを生徒に向けられる、愛されキャラの教師だ。 俺も体育ではよくお世話になっているため、少なからず敬愛している先生である。 そんな先生の名前を以前薫の口から聞いたことがあった。 「あかりんは強面受けだった!ゆっきー先生に襲われてたし!!」。 ……それを聞いた時、どれだけ悔しかったことか。 俺も見たかった!!なにその絡み!! 先生同士とか最高なんだけど!!てか、あの人が攻めなんだ!メシウマかな???と思わず叫んでしまったのも仕方がないと思う。 「ゆっきー先生」というのは薫のクラスを受け持つ担任の先生だ。 (わ た り) 小雪(こ ゆ き)先生。担当教科は現代文で、藍色鳩羽の長髪に亜麻色の瞳をもつ美人な男性教師で生徒にも中々人気のある人だ。 俺はそんなに関わることがないのだが、一目見た時はほんとに驚いた。 女性なのだ。いやほんとに。 性別詐欺で訴えてもいいくらいに。 薫に教えられた情報から言えば、彼はかなりドSで自分より大きい体格の男性を下に敷くのが好きらしく、バリタチとのこと。 生徒のことも美味しく食べているらしい。 それでいいのか、教師。 一応薫には「気をつけろ」と言われているため、その姿を見ても話しかけないようにしているが、話しかけられたらもうその時はあきらめるしかないと思う。 てか話しかけられたら女神に話しかけられたみたいなものなので、誰もが素直にパシリにでもなんでもなる気がする。 今まで美味しく頂かれちゃった生徒たちもそれだと思うよ。 だから話しかけないように話しかけられないようにしないといけないのだ。 興味持たれたらそれでおしまい。 一応俺も俺で力には自信があるんだけど、それを(握力 96の男)が先生に使うのは気が引ける気がするのだ。 …………先生の好みのタイプでもないのに、万が一襲われたとか笑えないな。 《─晦組が1着でゴールしました!そしてそしてここでなんと月代組が2着目でゴールを果たしました! さあさあ、盛り上がって参りました!今後どう動くのでしょうか!!!》 気付いたら薫の番は終わっており、次の走者たちがゴールを告げていた。 あ、やべ。と思った時には既に遅し。 あとで薫に「見てた?見ててくれてた?かっこよかった?」と聞かれるだろうと推測していただけに焦りが募ってゆく。 ……アンカーである遥まで時間はたくさんある。 それを確認した俺は隣に座って競技の行く末を見物していた会長さまに顔を向ける。 『会長さまあ。薫ってえ、何着でしたあ?』 「2着だったが貴様見ていなかったのか…?」 呆れが混じる視線が会長さまから刺され、苦笑を浮かべる。 そうして薫にどう誤魔化そうかとまた俺は思考を働かせるのだった。
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