青春という名の戦争がはじまる Ⅰ

10/21
前へ
/418ページ
次へ
「よし、行ってこい。」と甘すぎる笑みを浮かべた会長さまに促され、例の生徒たちが騒ぐ場所へと小走りで向かいながらも思考を働かせる。 うーーん、俺ただの親衛隊だよね? あれかな、新歓の時に会長さまたちと関わっちゃったからかな。 後々思い返せば、特典デートではかなり目立ったと思う。 会長さまたちと思いっきり行動を共にしてましたもんね。萌えを拝むためとは言え、かなり軽薄な行動だったなと後悔する日も数日ありました。 ま、開き直るしかないんだけども。 だがそこから絡むようになったのは副会長さまだ。 遊園地デートにて俺の本性を知られてしまい、副会長さまの本性と想い人も知ってしまい…と話すようになったことは仕方なくありません? 秘密を知ることで恋愛に発展にするなんて展開は少女漫画や恋愛小説、恋愛シュミレーションゲームなどでよく見られるし、個人的な趣味として俺も大好きだが、いざ当人になれば別に恋愛に発展しなくとも絡むようになってしまうことを納得する。 もちろん、秘密がバレないかという不安もあるだろうが端的に言えば安心するのだ。 秘密を隠して生きるなんて器用な人でも精神面においてはかなりキツいモノだ。 嘘をつくことへの罪悪感と嘘をつく自分に対しての嫌悪感。それに押し潰されるなんてこと容易く起きてしまうだろう。 最近、よく実写映画化される少女漫画の中でも「おまえ、バラすなよ?」と王子様な彼の秘密を知ってしまい、そう脅迫されるヒロインと彼の恋愛物語という物も存在するわけだから、吊り橋効果もあながち間違っていない。 俺が伝えたいのはただそれは友情の中でも有り得るんだということ。 秘密を共有する相手がいれば、自分を取り繕うなんてことしなくとも済むのだから楽に決まってるし、安心するなと言う方が難しいものだ。 …とまあ、ここまでは納得いただけると思うのですが問題は会長ですねはい。 新歓は会長を囮に、特典デートは寝起きの悪い大神を会長に、観覧車の時は……うーん確かに借りは何個か心当たりがある。 だが、ここまでして絡む理由にはならないはずだ。 あの様子から俺に恋愛感情は抱いていないと思うし、副会長さまとの関係の方が怪しいと思う。 ふむ、 副会長さまが受けでも会長さまが受けでもぷまい。 ……いやそうじゃなくて、と浮かんだ妄想を止めるため頭を横にぶんぶん振る。 やばい、ほんと俺だめ。腐男子としては誇れるけど人間としては誇れない。妄想のんのん。 「えっ親衛隊代表チワワちゃん!?!?」 いつの間にか彼らの近くまで足を進めていたらしく、俺に気づいた貴志くんが驚くように目を見開けばそう叫んだ。 え、なに俺そう呼ばれてんの?うける( ˙꒳˙ ) 『戦y…春川先輩と新島先輩ですよねえ?』 「えっあ、うん!?!?え"俺の名前…」 「副団長…いや我が仲間。なにか問題でもあったのか?」 貴志くんたちはどうやら先輩らしいので敬語で話しかけた。 それに返事するふたりに問題はきみたちだよ。とツッコミたくなる衝動をなんとか抑え、にっこりと笑みを浮かべて再び口を開けた。 『いえ!おふたりのお迎えに参りましたあ!』 (`・ω・´)ゞビシッ!!と敬礼付きでそう言い放つ。 ここで二人が原因で俺が会長に指示されたというのを口にするのはタブーだ。より面倒なことになること間違いなし。 なので曖昧ながらもノリにのっておく。 「えっあっはい!ありがとうございます!…ん?」 「副団長から直々にとは…光栄でございます。」 思わずノリにのってしまい戸惑う貴志くんの隣では目の見張る程の綺麗な敬礼でお礼を述べる戦友サン。 戦友キャラから騎士キャラに変更かな?? まあ、ふたりともいい感じに答えてくれたので俺はこのまま彼らを連れて彼らの席まで行くとしよう。 『それにしてもおふたりさんとても足が速かったですねえ!びっくりしましたあ!』 まずは貴志くんを連れていこうと月代組のテントが張られる場所へと足を進めながら軽く雑談を交わすことにする。 「委員長さまのため頑張りました!と言いたいところですが、自分は元々陸上部なので足は鍛えられているんですよ。」 なるほど。 天然だがあの色気と共に威圧感を出す堅物風紀委員長さまにはここの生徒には収まらず、人を従いたいと思わせる魅力がある。 その魅力にやられて「委員長さまのために!」と運動が得意ではない生徒でもそう言いながら成果を出すため努力をするのだ。 だが、貴志くんは違うようだ。 珍しいな、と思いながらも感心を覚える。 彼は本当に走ることが好きなようだ。 『さすが陸上部ですねえ!』 「そんなことは…」 「副団長も足とても速いらしいですね。同じクラスの生徒から聞きました」 謙遜する貴志くんを微笑ましい気持ちで眺めていると未だに騎士モードの戦友サンにそう言われ、「えへへ」とあざとくはにかんでみた。 チワワのはにかみって攻撃力高めらしいよ(ドヤ顔) 案の定顔を赤らめるふたりの様子に小さく笑ってしまった。俺のはにかみ最強説。 そこからなんとなく平和な雑談を続けながら、最後に先輩たちと連絡先を交換してお別れした。 隣にいた戦友サンは騎士モードのまま友人らしき男子生徒の方へ向かっていった。 その背中を眺めながら心を躍らせる。 やった、先輩の友達ゲット。キャラ濃いふたりだが嬉しいもんは嬉しい。 え?副会長さま? ああ、あの人の連絡先の交換は俺が断ったので友人ではありません。ただの知り合いです。たぶん。 会長さまとは仕事上連絡先を交換してるけど友人ではなく上司だ。隊長も然り。 とりま俺は先輩の友達がいなかったのだ。 むふふふ、と気持ち悪い笑いをあげてしまうのも仕方がないと思う。ゆるせ。 「その顔はやめろ。不快だ。」 『真顔で言わないでください。』 ゆるせ。
/418ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5558人が本棚に入れています
本棚に追加