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ちぇっ、と呟きながら気持ちを切り替える。
《ん"んっ…え、えーと気を取り直しまして！
次の種目に入らせていただきます！》
騒いでいた先輩ふたりを帰したのを見送っていたらしい放送委員が司会を続ける。
おつかれさまです。
それからは何の障害もなく、淡々と種目は続いていった。
ごりらたちのムカデ競争だったり、チワワたちの噛み付き合い(語弊)だったり…とこの学園らしい個性豊かな競技が行われた。
そして、午前最後の種目である借り物競争が放送委員の司会により等々はじまった。
『一般の高校だと借り物競争みたいな注目を受ける競技は午後になりますのにねえ〜』
「午後からは生徒会が決めた特別競技が入るからな。」
ひとりそんな感想を呟けば、なぜかまだ隣に居座る会長さまから言葉が返ってくる。
そう、ここの学園やはり王道なのだ。
先程の種目説明でお分かりいただけると思うが、通常競技もかなり変わったものだった。
まだ純粋に楽しめるものだったから全然良いのだが、生徒会が決めた特別競技は訳が違う。
いわゆる王道学園あるあるの女装コスプレといった男にとっては拷問でしかない競技があるのだ。
見る分にはご褒美でしかないそれだが、実は俺もその競技に強制参加させられる羽目に…。
クラスメート曰く、「女装をしても違和感ない生徒(つまりただの目の保養)と違和感しかないネタ枠な生徒が参加させられる競技」らしい。
もちろん可愛い(笑)俺は前者の方です。
ぜひ俺に頼みたいと血走った目で言われました。
全く嬉しくありません。泣きたい。
そして、その生徒会特別競技はそれだけではない。
王道だもんね。
女装はもうここの学園に入った時点で逃げられないことだと分かっているが、なぜかその生徒会特別競技ほとんど俺参加予定。なんでやねん。
ただでさえ注目される生徒が集まった生徒会。
そんな生徒会様々な人達が決めた種目になれば通常競技より増して注目を受けるのは当たり前だろう。
午前にそれを詰めれば、午後は恐らく生徒の体力が足りない。
激しい運動(意味深)はないが、ホモやゲイが集まる学園ならではの体力の使い方があるのだ、うん。
その考慮もあり、生徒会特別競技は全て午後にまわされた。
『今からはじまるものもかなり注目されますよねえ？』
今から始まる借り物競争は物というより人が借りられる種目だったりする。
つまり少女漫画的展開が期待される種目なわけ。
「だから午前最後の種目にしたろ。」
『なるほどお！』
これが終われば昼食タイムというわけだ。
あ、いしきしたらおなかなった。
呆れた視線をこちらに送ってくる会長さまはスルーすることにして、俺は種目が行われるそこに目を向けた。
そう、俺借り物競争で"好きな人"と走るフラグを折ることに成功しました。ほめて。
生徒会特別競技に参加することも決定されていたため、「疲れるのはやだなあ〜…」と上目遣いで委員長の田中くんに言ったら参加することを免れたのである。
ちょろいぞ、委員長。
《ただいまから行われる借り物競争には生徒からの人気を誇る生徒もちらほら見受けられます！
これはこれは期待大でございます！》
この種目に参加するのは確か爽やかくんと隊長、あと元一匹狼の大神くんだったかな…。
メンバーを思い出しながらその姿を探す。
…うーん、爽やかくんはともかく大神くんが参加するということは萌えの期待があるということ。
つまり、遥と大神くんの愛の逃避行(ちがう)が拝見できるということ！
想像しただけでにやにやしてきそう…。
《では、位置について。よーい…》
あかりちゃんこと剛田先生がピストルの玉を空へ撃ち、第一走者である生徒たちが走り出した。
一番速く走り出し紙を手に取った黒髪くんは、紙を視界に入れた途端 月華組のテントが張られた場所へ駆け出した。
『はや…』
月華組の元へ駆け出した黒髪くんは座っていた茶髪くんに向かうと手を差し出した。
それを見ていた生徒は傍観者ながらに 口々に大きな歓声を上げる。わかる。
「ぼぼ、僕と…っ！一緒にゴールしてほしい！」
黒髪くんが吃りながらもそう大きく叫べば、茶髪くんはその視線を一瞬和らげるとすぐさまに強ばらせた。
んん？
「…っなんで俺のところに…」
「それは僕が南くんのことが好きだからだよ？」
「っっは、はあ！？何言ってんの！？」
え、なにそれなにそれ。
黒髪くんってばさっきは吃ってたのに甘い言葉はそんなにスラスラ話しちゃうの？
「それとも…南くんは僕がきらい？」
「っち、ちがうけど！」
「なら好き？僕はだいすき！」
は、鼻血が出る…。
「えっ！…っあ。あ、あっそ。」
「南くんもだいすき？」
「っき、きらいじゃない…だけだもん」
「ふふっ。僕も愛してる」
「～〜っな…っ！？お、俺そこまで言ってないし！」
黒髪くんは茶髪くんの赤く染まった頬に口づけをすると、ふたりは手を繋いでゴールへと駆け出した。
ツンデレ受け最高かな？？？
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