青春という名の戦争がはじまる Ⅰ

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「──なんだアレは」 『僕が、僕が聞きたいですよぉ…!』 なんで…!!どうしてこうなった!?!?!? 胴上げしようとする生徒たちを慌てて止める教師たちを視界に捉えながらも、思わず遠い目をしてしまう。 ……俺が間違っていたのかな() あんまり大神くんにその辺の期待はしない方がいいということなのだろうか。 いやでも、あんなこと言うとか普通考える??? 普段の大神くんと先程の流れだと告白なんだって思うに決まってんじゃん?? だから、 ただのクラスメート紹介であんな雰囲気出すなよ!!! そりゃあ胴上げしようとする生徒現れるよ。クラスメート発言を口にしていてもあんな雰囲気出されば胴上げしたくなるよ。 おかげでこっちは映画のラストシーン見せられてる気分になった。全米が鼻で笑ってそうだけど。 『く、悔しい……』 少しでもちょっっっぴりでも萌えてしまった自分が情けなさすぎる。悔しい、なんで俺あんな低レベルの場面に萌えたんだ。 お題がクラスメートだって知っていたら、「なにやってんだ、きみら」と冷たい視線を送っていたというのに。 《ん"ん…!で、では気を取り直しまして》 …………あの放送委員…(´・_・`)カワイソウナヒト… 本日二度目に至る咳払いがマイク越しに耳に入ると、体育委員たちが次の選手たちを位置につかせる。 あ、もちろん大神くんたちはビリでした。 当たり前である。あんなに時間を使ったのだから。 ただ、少し不満があった。 大神くんと同じ第一走者の生徒たち…あの人たちも涙ぐんでいたんだよね。いやいやきみらまで泣くなよ、走れ走れ。 「大神…っ!ゴールで待っているぞ!」じゃねーよ。 はやく走ってゴールしろよ。 ちなみに1位は風紀委員長が君臨する月代組の生徒だった。さすがです。 え、晦組?(聞いてない)……あの人は大神くんたちに感涙して走ったせいか、3位でした。なにしてんだ。 《では、位置について。よーい、》 あかりちゃんのマイク越しに聞こえる低い声と共にピストルの玉が撃ち上げられ、第二走者らしい生徒たちが走り出す。 それからは平和かつ萌えな借り物競争が行われていった。もちろん多数のカップルも生まれた。 これぞイベントマジック。 想いを確かめ合ったばかりのカワイイカップルを目に焼き付けながら、次の走者たちに目を向ける。 あ、隊長だ。 太陽の光に当てられて輝く金色のウィッグ()を暑苦しい風が優しく撫で、その端正な顔立ちに置かれた楊梅(や ま も も)色の瞳が細められる。 平たく言えば、チャラい容貌のイケメンが暑い空間に嫌気をさして顔を歪めてる。 こういう時ほど憎いよね、イケメンって。 細かく説明すればする程神々しく感じさせられる。 ナニソレウラヤマ。 「アレは確かお前の上司の結城か」 『会長さまって全生徒の名前と顔一致しているんですかあ?』 「そうでもない。要注意人物や人気の生徒…要は覚える必要のある生徒しか覚えてはいない」 『要領いいですねえ』 「まあな」 そして気付けば会長さまは"貴様"ではなく、"おまえ"と俺を呼ぶようになっていた。 やだ、どんどん距離が縮まっている気がする。 遠回しに呼ぶな、と言ってもこの何様俺様バ会長様は無論聞き入れてくれなかった。 なんて横暴なんだ、この人。 『ハハッ↑』 「お前モノマネ上手いな」 うるせーやーい。
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