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『たたた、隊長お…っ!?!?
な、何してるんですかああああああああああ』
「しっかり掴まっててねぇ〜」
いつもの隊長に戻った彼はなぜか俺をいわゆるお姫様抱っこと呼ばれるもので俺を持ち上げて走っていた。
黄色い歓声も増した気がする。
涙も止まり、今ではすっかり隊長に振り回されているこの状況。
…っいやいやなにこの状況!!
体育祭でよくみるやつ!!萌えるやつ!!
けどどちらも腐男子ですよ隊長!!!
え、俺が隊長を攻めるってこと??
いやいやこちとら男を攻める度胸なんて持ち合わせていません。
妄想のんのん。これはアレだ。隊長がしてみたかったのだろう。うん、有り得そう。
てか、お姫様抱っこって以前も副会長さまにされた気がする…そうあれはお化け屋敷で……うわ、余計なこと思い出した早速忘れよう。
「煉ちゃんってば軽すぎなぃ?ちゃんと食べてるぅ?」
『食べてますからあ!それ気にしてるんですう!』
「ふふっ、なんか落としたら壊れそぉ〜」
『落ちたら普通に怪我をするのでやめてくださいねえ?!』
「お姫様抱っこって案外簡単にできるんだねぇ〜」
『だからって無闇にしないでくださいよお!許可を得てください!許可を!』
「えへへ…見逃してぇ?」
ちくせう。かわいいなちくせう。
腕を首に回したせいか近くなった彼の横顔を眺めながら、そう心の中で呟く。
そして改めて思う。この人受けだわ。
さっきはめちゃくちゃかっこよかったけど、本来の隊長に戻ればただのイケメン受けだわ。
なにそれ美味しい。
てか、175cm以上ある隊長にお姫様抱っこをされるとこの眺めを見ることが出来るんですね。
わお高え。俺が高くなった気分になる。下ろされてもこのままの景色を見ることができたらいいのに。
ちくせう。
しかし、この体勢は腐男子としても男としてもかなり精神的にクるものがある。
いやまじで恥ずかしい。
なにやってんだろ、俺。
胸を痛めて泣いたり、それを慰めてくれた人にお姫様抱っこをされて羞恥心に駆られたり…。
当事者でさえなければ萌えるこの状況。
腐男子としてはあるまじき行為だ。
あーあ、コレ絶対腐男子の餌だよね。
……俺もほしかったな、餌。
思わず遠い目をしてしまうのも仕方ないと思う。
現実逃避をしないとやっていけない。
副会長さまにされた時はまだ辺りは暗かったし…いやめちゃめちゃ恥ずかしかったけど!けど!!
ここは体育祭が行われている場所、しかも金持ちやエリートしか通わない月丘学園がイベントのためにわざわざ大金を使って設けた場所だ。
……広いわけが無い!!!!
やばいやばい、会長さまといる時も嫉妬の視線は凄かったけど隊長も隊長でモテるんだった!この人親衛隊隊長として嫌われているハズなのにこの容姿のせいか人気なんだった!忘れてた!嫉妬の視線が怖い!!!
『それにしても隊長ってば爽やかすぎませんかあ?』
「え、そぉ〜?」
不思議そうに首を傾げる隊長を見ながら益々その視線を鋭いものに変える。
華奢なことには変わりないし、身長もこの学園で言えば平均的だ。
……なのにこの軽々に走る様。
俺が軽いことは…まあ、事実としてこんなにも爽やかに走れるものなんだろうか。
これだからイケメンは、とまた鋭くなった視線に隊長は笑いながらも爽やかにゴールを切っていた。
《さて!親衛隊隊長さまの気になるお題は何でしょう!》
《……ん〜煉ちゃんは俺のカワイイ後輩でぇ》
『………………隊長お?』
《俺が"守りたい人"だよぉ〜》
「だから大人しく守られてね。」
そう囁くように言われた言葉にまた泣きそうになり、視界が滲む。だがその涙は先程とは違い、温かくて何だか愛おしく感じる涙だった。
───ほんと、この先輩には敵わないな…。
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