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《只今からお昼休憩となります。生徒の皆さんは各それぞれの場所で食事を済ませ、午後の競技に入る前に各席に座るようにして下さい。
これで午前の競技は終了とさせていただきます》
そんな放送のあと、俺はいつものメンバーに薫を混じえて食堂で食事を摂ることになった。
黄色い歓声には手を振るサービスもするくらい、俺は今上機嫌です。お腹空いたのだ。
「おお…。やっぱ混雑してるなあ」
「俺と大神で席取っておくから三人は先に注文しておいで」
「げ、おまえとかよ」
「じゃあそうする!ありがとな、爽汰と大河」
「あっ、お、おう!」
「爽やかきゅんってば第二のオカンキャラなのね。
萌える……」
「行ってらっしゃい」
「華麗にスルーされた!!!」
学園とはまた違う豪華な内装に圧倒されながらも席を取っておくと言ってくれる爽田と大神にお礼を言い、俺たちは注文をするために料理が並べられた席へと向かった。
またしても豪華な料理に目を見張らせるが、はやく慣れてしまおう。
注文をしようと向かえば、既に訪れていた生徒たちの長蛇の列ができている。
うわー、待つの時間かかりそう。
思わずげんなりとしてしまうが、並ぶ生徒の顔を見れば何故か楽しそうに雑談している様子。
それを首を傾げて見ていれば同じくげんなり顔を浮かべる薫が口を開く。
「あれだろ、お金持ちな坊っちゃまはどうせ列に並んで料理を待つなんてことしたことないから楽しみなんだろ。うわーやだやだこれだからお金持ちは」
「星谷ひねくれてるな…」
ひねくれている薫の言い分に納得するように頷く。
なるほど、お金持ちは並ぶのも初めての経験なのか。
『じゃあ、もしかしたら爽田くんたちも初めてなのかもお?』
「……よし、石油王と結婚してお金持ちになろう」
「あー…あの様子は初めてそう。ならあのふたりに誰かついていった方がいいよな?俺がいこうか?」
俺の疑問に席をとったらしい爽やかくんたちに目を向けて答える遥に首を横に振る。
初めてと言えど、彼らも家を継ぐ立派な令息な高校生なわけでついていくのも不要だろうと思ったからだ。
それにここの列に並んでいる生徒たちが不慣れながらもしっかり注文できているのだ、色んな状況の処置に慣れている爽やかくんたちに心配は要らないだろう。
そう言えば遥は「そうだな…」と少し頬を赤らめながら答えた。
そんな彼に面倒見良いなあ、と微笑ましい気持ちになり思わず口許が緩む。
純粋に心配しているからこそできる行動。
……この王道転校生に当たってよかった、と心の底から思う。アンチは二次元でお腹いっぱい。
「わ、爽汰のそれ美味しそう」
「沢山取ってきたしあげるよ。煉もいる?」
『やったあ!ありがとおー!』
期待通りしっかり注文を終えた爽やかくんたちと共に取ってきた料理たちを頬張る。
え、なにこれ。超美味しい。
イベントの日だからかいつもの高い値段より格段に安く売られていて予定より多めに買ってしまった。
完食できるだろうけどデザートもたくさん買っちゃったし、薫と半分こにしようかな…。
遥たちと雑談しながらそれを次々に食べていくと、先程からあまり話さない大神くんが気になり目を向けた。
大神くんが頼んだのはデミグラスソースがかかったハンバーグとごはんのセットとサラダ。
それが先程から全く減っていないのだ。
え、食欲無さげ?
『大神くうん?お腹空いてないのお?』
「……っえ、あ。いや」
三人の楽しげな雑談を横目に向かいに座る大神くんに尋ねれば返ってくるのは戸惑い。
よく観察すれば、頬が少し赤いような…。
『お腹空いてないなら僕が食べてあげるよお?
もしかしてえ、体調悪い?だいじょーぶう?』
「…………じ、実は…っ」
『んう?』
益々赤くなってゆく頬に首を傾げながらも彼の言葉を待つ。そして覚悟を決めた顔を浮かべて──
「は、遥とクラスメートになれたことがう、嬉しくて…喉が通らない、というか……」
さ、はやく食べてしまおう。
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