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玄関のドアを閉め、鍵をかける。
扉に背を向け、駅へと向かう一歩を踏み出した。白い空を仰ぎ見てこれからの旅路に、お嬢さんとの時間を夢見つつ、さらに一歩踏み出した。どうにか間に合いそうでよかった。今日のこれまでの出来事が頭の中を流れていく。朝早くから起きて、ごはんを食べながら母と会話し、シャワーを浴びて、着替えて…。
ちょっと待てよ。
アッシュが足された空から目が離せなくなった。母との会話がフラッシュバックした。
『今日は午後から天気が荒れるみたいだよ』
濁った空は雨の訪れを告げていた。僕は足元に目を落とした。視線の先には自分の足を包む革靴がある。革に水は厳禁なのだ。
いつのまにか僕の足は泥に沈みこんでいた。
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