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麻のジャケットと
自室に戻った僕はまず着ていたカットソーを脱ぎ、腰辺りのタグに油性ペンでバツ印をしっかりと書いた。これでお前は今日から部屋着だ。新しく部屋着の仲間入りをしたカットソーに心で語りかける。思えば四年前にアウトレットで出会ってから季節の変わり目毎にお世話になってきた服だ。紫外線や雨、埃から僕の身を守り続けてくれた。汗や皮脂を吸い取り、繰り返される洗濯の衝撃に耐えてきたカットソーとの思い出を振り返りながら僕はそれを床に投げ捨てた。
「こんなことしてる場合じゃない」
そう、時間がないのだ。
あと三十分以内に着替えを終え、家を出なければならない。お嬢さんを待たせるわけにはいかないのだ。お嬢さん、今日はどんなかっこうでくるのかな。いつも素敵だもの。
…は。いけない。思考が遠くに羽ばたいていくところだった。
僕は再び姿見の前に立ち、玄関で感じた問題点を頭の中で整理する。
・着古したカットソー→清潔感
・色の組み合わせ→一体感
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