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台風一過 お出かけ日和の日曜日のお昼過ぎ 部屋の窓から見えるのは、 昨日の大雨と違って、 雲ひとつない青空 目の前には、部屋の主、有川湊人(ありかわみなと) 湊人は同中だったんだけれど、卒業後、私とは別の高校に通っている 家は近いのに、週末しか会えないのだから、遠距離恋愛と何ら変わらない 平日は会えなくて、いつも寂しくて 寂しくて、寂しくて、………そして不安なのだ 今目の前にいる湊人は、明日の試験勉強の追い込みをしている、らしい 中学から変わらない 正確には、追い込みというより、一夜漬けだよね 「ねぇ、湊人。息抜きにコンビニにアイス買いに行かない?」 顔を上げた湊人の前髪に、さっき付けた私のヘアクリップが光る こんな湊人の姿を見れるのは、私の特権だよね 小さな満足感に頬が緩んじゃう 「碧(あおい)はテストじゃないから良いけれど……あー、やばい、今は無理だ」 そう言うと、湊人はまた、机に目を戻した 会えるのは休日だけなのに テストなんて無ければいいのにね 「わかった。私、今日は帰るね」 わかってはいるけれど、頬が少しだけふくれちゃう 湊人にもらった空色のバックをギュッと掴んで、部屋のドアノブを握り締めた あ、そうだ 「テストが終わる火曜日の約束は、大丈夫、だよね?」 「ん?火曜日」 「火曜日だよ。もしかして、また、私との約束、忘れてるの?」 湊人は、高校に行ってから、よく、私との約束を忘れる 私のこと、どうでも良くなったのかな 「あ、ああ、ああ。火曜日だね。バッチリだよ」 何どもってるのよ また、忘れてたのね 「よかった。あの映画、楽しみなんだ」 「え、映画ね。待ち合わせの場所と時間、ちゃんと連絡しろよ」 「うん、連絡するよ」 約束を忘れられちゃって凄く釈然としないんだけれど、火曜日の約束を確認できたことで気持ちを誤魔化して、私は湊人の部屋を出た
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