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ブブブっと振動する携帯。
画面には、思った通りの名前。
「もしもし?」
私が笑いたいのか、壱くんを不安にさせてないか不安なのかちょっとよく分からない感情。
声が不安定だ。
『…洗濯物どこ?』
いつも通りの静かで低い声。
「あのね、今日ボンヤリしててそのまま持って帰って来ちゃったんだよ。」
フッと空気の漏れる音が携帯から微かに聞こえた。
『今から取りに行って大丈夫?』
「それがね、お母さんがもう洗い始めてて…。」
有り得そうな嘘を重ねていく。
壱くんもその情景が浮かぶのか、またフッと空気を漏らす。
「で、今からご飯食べに来ない?」
脈絡なく餌を出して釣る。
「洗濯物取りに来るならついでだし。」
謎のオマケ。
「今日は、かやくご飯も炊いたよ。」
白飯バンザイだから、魅力的な話になってるかは謎。
それでもいい。
あの文字を独りで見ないで。
『オレの量で炊いてたら、行かないと逆に迷惑かけちゃうよな?』
おぉ、長文!
そうそう、そうだよ。
迷惑かけたくないから来ればいいんだよ。
「お母さん、楽しみにしてるしね。」
その数分後、壱くんはリンゴを沢山持って現れた。
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