(未定)

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やっぱり今日もおじいさんは眠っていて、静かな寝息を繰り返していた。 それでもキチンと 『洗濯物。いつもありがとう。』 というメモが袋に書いてある。 少しだけ線がぶれ始めた文字。 始めは気のせいとか、たまたまとか思った。 父のせいで筆運びや線の強さが気になる。 個性では済まされない変化。 壱くんもこの文字、見るんだろうな…。 ノスタルジックでは済まされない焦りを伴う何かが、心の奥から歩いてくる。 仕事で疲れて帰宅した後、玄関に置かれた荷物。 たった独りで…鍵を開ける前に見るような事はさせたくない。 その時、母の悪巧みする笑顔が横切った。 母が、いつもどうでもいい事を不意にやらかしてくる理由が、この時やっと分かった気がした。
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