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「新庄くんは27だっけ? 若いから肉好きなのはわかるけど、まぁ、野菜は食べた方がいいと思うよ。でも、何事もバランスだとは思うけどね」
「そう言っているけど、東さんは色々とバランス悪そうですよね」
新庄がからかう様に言うと、東は苦笑いをした。
東は思う。
……あれ、いじって来るなんて、新庄くんってこんなキャラだっけ?
まぁ、俺の事をお気に召してくれたのかな?
めずらしい子だな……。
東がそう思っていると、近くの席で若い男と女が怒鳴りあいを始めていた。
男も女も二人とも、その場に立ち上がって、周りの目など気にせず、激しくやりあっている。
「あなたは才能のある人なのよ。なのに……どうして……どうしてやめるなんていうのよ!!!」
「勝手に決めんな!!! お前はいつもそうだ!!! 俺に才能なんかありゃしねぇよ!!!」
恋人同士のケンカ?
いや、そんな感じでもない。
どうやら、何かをやめたがっている男を、女が止めているようだ。
東はそのやりとりを聞いていて、右手の爪と肉の間に針を入れられた感じがした。
「もう知らねぇ!!!」
男はそう言うと、数枚のお札をテーブルの上に乱暴に置いて、店から出て行った。
一人残った女は、泣きながらブツブツなにか言っている。
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