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第3話 人生に確実な答えなどない
居酒屋の客が次々と帰っていく中、新庄がヨーグリート頼み、東はまたコーラハイボールを注文した。
時間はもう深夜一時くらいなる。
そんな時間に、東と新庄の席の近くで、学生と思われる男女が盛り上がっていた。
「さっきのカップル、マジでやばくね?」
「ですよね~。こんなところでやるフツウ? 家でやってくださいって感じですよね」
ひどいな、と東は思ったが、こうやって聞き耳を立てている自分が否定する資格はないと、反省する。
だが、東の耳には学生たちの会話が入ってきてしまう。
「ねぇ、ところでさ。みんな彼氏いないの?」
「えぇ~。いないですよぉ。ねぇ?」
近くの席の男性の一人が、女性達に訊いている。
おそらく始発まで飲み、こういう話を続ける気だろう。
新庄は薄ら笑いを浮かべながら東に訊く。
「東さんは彼女いないんですか?」
東は思う。
……新庄くんも学生たちの話を聞いていて、ふざけているんだな。
東は、そう言われるとうんざりした顔で答えた。
「いないよ。俺みたいな男に彼女なんてできないよ」
「そんな事ないでしょう? だって東さんは歳のわりに若く見えるし、優しくて顔も端整だ」
東は思う。
……お世辞かな。
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