61人が本棚に入れています
本棚に追加
/312ページ
まるでクラウトロックのハンマービートだ。
東はそれを聞いて、心の中で苦笑した。
「おいっ! 44番! 作業しながらでいいから聞け!!!」
短髪を茶色に染めた、軽薄そうな若者が東に声をかけた。
おそらく30代前半の東より年下だろう。
「今日残業。4時間な」
「いや、あの俺はもう残業時間が……」
茶髪の若者はこの部署の管理者で、不機嫌そうにそう言うと、すぐに行ってしまった。
東は予定があったわけではないが、会社の決めた残業規定をオーバーしていたため(時間をこえると残業代はつかなくなる)、断ろうとしたが聞いてはもらえなかった。
東は思う。
……またか。
でも、しょうがない。
それが仕事だ。
俺の履歴書じゃ、こんな職場しか見つからない。
その日の帰りに――。
「東さん。今日金曜だし、飲みに行きませんか?」
東に声をかけてきたのは、隣の部署に入った新庄真次。
モジャモジャのパーマ頭は、おそらく天然ものだろう。
東の髪形は目が隠れるくらい長く、かなりもっさりしているが、新庄の髪形も同じくらい、いや、それ以上にもっさりして、かけているメガネも隠れそうだ。
……もっとすっきりした髪形にしたら、さわやかなのになぁ。
最初のコメントを投稿しよう!