第1話 何でもない日

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まるでクラウトロックのハンマービートだ。 東はそれを聞いて、心の中で苦笑した。 「おいっ! 44番! 作業しながらでいいから聞け!!!」 短髪を茶色に染めた、軽薄そうな若者が東に声をかけた。 おそらく30代前半の東より年下だろう。 「今日残業。4時間な」 「いや、あの俺はもう残業時間が……」 茶髪の若者はこの部署の管理者で、不機嫌そうにそう言うと、すぐに行ってしまった。 東は予定があったわけではないが、会社の決めた残業規定をオーバーしていたため(時間をこえると残業代はつかなくなる)、断ろうとしたが聞いてはもらえなかった。 東は思う。 ……またか。 でも、しょうがない。 それが仕事だ。 俺の履歴書じゃ、こんな職場しか見つからない。 その日の帰りに――。 「東さん。今日金曜だし、飲みに行きませんか?」 東に声をかけてきたのは、隣の部署に入った新庄真次(しんじょうしんじ)。 モジャモジャのパーマ頭は、おそらく天然ものだろう。 東の髪形は目が隠れるくらい長く、かなりもっさりしているが、新庄の髪形も同じくらい、いや、それ以上にもっさりして、かけているメガネも隠れそうだ。 ……もっとすっきりした髪形にしたら、さわやかなのになぁ。     
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