第1話 何でもない日

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どこか優等生なスポーツマンを思わせる風貌(ふうぼう)。 本人には言っていないが、東はそう思っていた。 いつも本を読んでいる東に興味を持ったらしい彼は、月に一度くらいのペースで、飲みへと誘っていた。 まだ若いのに、なんでこんな職場のパートなんかやっているのだろう? 新庄は休みが多いのだが、もしかしたら副業で稼いでいるのかもしれない、と東は推測している。 「別にいいよ。でも一度帰って、シャワー浴びたい」 「じゃあ、23時に茅ヶ崎駅の切符売り場でいいですか?」 東はうなづくと、原付バイクでその場を去っていった。 「ただいま」 東は家に着くと、両親に夕食は同僚と食べると言い、浴室に入っていく。 ……新庄くんはなんで俺なんかと飲み行くんだろう? よくわからん。 それにしても新庄ね……。 めずらしい名字だけど、まさかあの人の……。 まぁ、そんな偶然はないか。 浴室から出て、自分の部屋で着替えていると、ドアに大きなノックが聞こえてきた。 東の父親だ。 「おい!!! また飲みに行くのか? 遊んでないで早く結婚相手でも探せ!!! それとお前はいつ正社員になれるんだ」 「……そんなすぐにはなれないよ」     
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